無印編
第十一話 裏 (なのは)
[11/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
向かう。ドアをノックし、部屋に入るとそこには、真面目な顔をして座っている士郎がいた。しかも、どこか空気が重いような気がした。
「座りなさい」
士郎に促され、正面の座布団に座る。士郎の部屋は簡素なもので、タンスやらがあるだけで後は畳だ。普通はテーブルがあるのだが、今日はどこかにたたんでいるようだった。
「今日のことは恭也から聞いた。魔法を使ってユーノくんが言っていたジュエルシードとやらを封印したらしいな」
「うん」
「なのは、その魔法の力というのはとても大きな力だ」
それはなのはも同意だ。なにせ、兄も姉も、あの蔵元翔太も適わなかった力だ。ならば、魔法の力というのは強大なものであることには間違いない。
なのはがコクリと頷くのを確認して、士郎は言葉を紡ぐ。
「力そのものに善、悪はない。あるとすれば、それは使う人間次第だ。だからこそ、なのはにはその魔法の使い方を考えて欲しい。なのはは何のためにその力を使う?」
そんなことは、決まっている。ジュエルシードを封印するためだ。そして、翔太に褒めてもらうため、構ってもらうためだ。なのはが魔法を使ってジュエルシードを封印する限り、翔太はなのはの傍にいてくれるだろう。だから、なのはは魔法を使う。ただ、それだけだ。
「それは、なのはの力だ。なのはが決めたことなら自由に使っていいと思う。だが、できれば、父さんは、恭也や美由希が学んでいる剣術―――御神流の理念である人を護るためにその力を使って欲しいと思う」
何を言っているんだろう? なのはは、一瞬、士郎の言っている意味が理解できなかった。
ヒトヲマモル、ひとをまもる、人を護る。
どの口がそれを言っているというのだろう。
なのはが幼い頃、一人でいることが寂しくて、耐えられなくて、夜に涙で枕を濡らしているときに助けてくれなかった人たちが、構って欲しくて後ろを着いていったり、遊んでと懇願していたのに、「忙しい」の一言でなのはを遠ざけていた兄や姉たちの理念が『人を護る』?
ならば、幼い頃のなのはは人ではないとでもいうのだろうか。あるいは、護るに値しない子供だったというのだろうか。
この部屋に入る前まで有頂天だったなのはの気分は今は地の底にまで落ちていた。
暖かい何かが居座っていた心の中心は、思い出さないようにしていた幼い頃の記憶が思い出され、一気に冷却され、今は寂寥感に支配されていた。しかも、芋づる式にずっと寂しかった頃の記憶が思い出され、なのはの気分は底なし沼のように沈んでいく。
心が冷たかった。
今はただ、この部屋にいたくなかった。部屋に駆け込んで枕に頭をうずめて涙を流したかった。だから、なのはは小さく「わかった」と口にして、士郎の部屋を出て、すぐに
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ