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遊戯王EXA - elysion cross anothers -
TRICLE STARGAZER
TRSG-JP009《未来に繋ぐ布石》
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なら台所に……ごめんすぐ連れ戻す!」
「急ぎなさい! クレナも蓮と行って!」
「あ、はい!」

 これでまた、晩御飯が遅くなりそうだ。全く、油断も隙もない奴らめ………!

「話を戻すわ……と言いたいところだけど、私達以外台所に行っちゃったわね」
「………私は」

 いつの間にか、夜神の目には大粒の涙が浮かんでいた。道標の灯を消され、暗闇の中で絶望した少女が、光を殺した私達に訴える。


「じゃあ、私はどうすればいいんですか! あなた達に生きる意味を全部奪われた私は………!」


「知らんがな」


「…………っ!」
「私達は主人公じゃない。だから、あんたの生きる意味を奪ったところで新しく与えることなんか出来ない。悪いけど、私達からあんたに渡せる選択肢は一つもないわ」
「………」

 声を殺して泣き始めてしまった彼女を見て、心が痛む。
 自分でも、今の言葉は残酷だとわかる。だけど……本当に嫌だけど、これが彼女に突きつけてしまった現実。

「そうね、あいつなら……」

 ふと浮かんだ考えが口に出てしまったらしい。私の声に、夜神が顔を上げた。

「……あんたを生き返らせた望月黒乃。彼なら、きっと"選択肢"を持ってると思うわ。今日の夜にでも、二人になったときに聞いてみたらどうかしら?」
「望月、黒乃……」

 ……彼なら、きっと。他の転生者とどこかずれた彼なら、もしかしたら。

「沙耶ちゃん、晩御飯できたよ!」
「だーかーらー! 完成した料理に味噌を入れるなと! 」
「黒乃様! 洗剤の付いた手でご飯をよそうのはやめてください!」
「お願い! このままじゃ晩御飯が壊れるから! 二人とも本当にやめてぇ!」

 あいつらェ……。

「ほら、行くわよ夜神! 私達の晩御飯を死守するために!」
「………え」
「涙を拭きなさい。あんたはしばらくこの家に住むことになった、いいね?」
「あっ、はい………はっ!?」

 二人の必殺料理人を必死で抑えている蓮達を援護するべく、私と夜神は台所へ向かった。


 ―――今晩、私達の物語は一つの節目を迎えるだろう。


「ゆみなァ! だから洋風に仕上げたおかずをかもそうとしないで! その手に持ってる醤油を下ろして!」
「黒乃様! 味噌汁に入れようとしているそれは何ですか! 洗剤は調味料ではありませんよ!?」
「あんた達、さっさと料理を運びなさいよ―――!」

 とりあえず目の前の惨劇をどうにかしなければ、私達にその今晩は来なくなってしまうのだが。


    to be continued...
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