無印編
第十一話 中
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て昨夜のような目に会わないかもしれないけど、デメリットとして非常に労力が必要だろう。なにせ場所がきちんと分からないのだから。この海鳴市を歩き回る必要があると思う。
二つ目の方法は、メリットとして一つ目ほど労力が必要ではないけど、デメリットとして昨夜のような戦いをあと19回繰り返さなくちゃいけない。
三つ目の方法は、メリットとして労力も戦いもないけど、デメリットとして自分たちの街が壊されちゃうかもしれない。しかも、クラスメイトや家族が巻き込まれる可能性がある。
どれも一長一短だ。しかしながら、方針を提案していながら実は僕に決定権はない。決定権を持っているのは―――
「どうしようか? なのはちゃん」
「ふぇ? わ、私?」
突然、話を振られたことに驚いているのか、自分で自分を指差して、授業中に夢うつつのところを教師に当てられたような顔をしている。
「そうだよ。なのはちゃんが決めてくれないと」
そう、偉そうに何かを提案しているように見えるが、実は僕には決定権がまったくない。現状、僕は、魔力を持っているらしいが、それを魔法という形で使うことはできない。それができるのはレイジングハートを持っているなのはちゃんだけ。つまり、これからの行動を決めることができるのはなのはちゃんだけなのだ。
「え……ショ、ショウくんが決めてよ」
「ダメだよ。これからのことはなのはちゃんが主役なんだ。脇役の僕が決めていいことじゃない」
他人から決めてもらうことは確かに楽かもしれない。だが、そこには自分の意思がない。ならば、その決定に心血注ぐことができるだろうか。表面上は可能かもしれないが、心底というのはやはり無理だと思う。自分で決断するということが大切なのだ。だからこそ、僕はなのはちゃんが決断するのを待つ。
もちろん、僕はその決定に従うし、最大限、手伝いはするつもりだ。乗りかかった船というのもあるが、僕から見ればなのはちゃんも小学校三年生の女の子。僕としては心配なのだ。もっとも、現状は僕はむしろ一緒にいるとなのはちゃんから護ってもらう立場になってしまうので、何か手を考えなければ、と思ってはいるが。例えば、レイジングハートなしで魔法が使えないか、とかである。
「えっと……その……」
さて、なのはちゃんは迷っているのか、僕のほうをちらちらと見ながら唸っていた。
だが、僕は何も言わない。僕の意見は提示している。ならば、後はなのはちゃんが決めるだけだ。僕はゆっくりと彼女が決断するのを待つしかない。
やがて、なのはちゃんは意を決したのか、う〜、と唸って、閉じていた口を開いた。
「……本当に私が決めるの?」
「なのはちゃん以外には誰にも決められないよ」
それが契機になったのだろう。
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