無印編
第十一話 前
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を見た瞬間、まるで幽霊でも見たように目を丸くして驚いていた。
まじまじと僕の顔を見ながら、高町さんは無言。一体、どうしたというのだろう?
「……蔵元くん?」
「そうだよ。蔵元翔太だよ」
やがて、呟くように僕のことを確認する高町さん。本当にどうしたというのだろうか。
そんな風に僕が顔を見ていたのが悪かったのだろうか、なぜかじわぁっと目が潤んでいるような気がする。
「た、高町さんっ!?」
僕はあまりに突然の出来事に慌てた声を上げてしまう。困った、まったく意味が分からない。僕は一体なにをしたというのだろうか。肩を叩いただけで女の子を泣かせるようなことはしていないと天地神明に誓っていえるのだが。
だが、僕の声で気がついたのだろうか。目をぱちぱちと瞬き、ごしっと袖で涙を拭う。袖が通った後、高町さんの顔には笑顔が浮かんでいた。
「えっと、高町さん、大丈夫? 僕何かした?」
「ううん、何もしてないよ」
「本当に?」
「うん、ちょっと目にゴミが入っちゃっただけだから」
にゃははは、と笑う高町さん。その表情はとても作り笑いのようには見えない。これは、一安心しても良いのだろうか。少し気になるが、ここまで聞いても何も言ってくれないということは彼女には言う気はないということだろう。なら、これ以上、聞き出したとしても無駄だと思うので、とりあえず、この件は保留にすることにした。
「えっと、それじゃ、高町さん、今日はお弁当?」
「うん、お母さんに作ってもらった」
僕は彼女の返事にほっと胸をなでおろした。もしも、彼女がお弁当ではなく家で食べるのであれば、一度、高町さんの家に行かなければならないからだ。今の状況とこの先の状況が分からない以上、彼女の家でおおっぴらに魔法の話などできない。だから、高町さんがお弁当を持ってきているのは好都合だった。
「それじゃ、公園で食べようか」
海鳴市にある公園。サッカーや野球ができるほど広いというわけでもなく、ジャングルジムやブランコなどの遊具があるわけでもない、そんな場所。ゆえに平日の昼間はまったく人気がない。早朝や夕方は、ランニングなどをする人がいるが、お昼には本当に人気がない場所なのだ。
僕は、それでいいかな? と問いかけるように高町さんに視線を合わせると、高町さんはうん、と頷いてくれた。
さて、フェレットくんはきちんと来てくれているだろうか。
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