無印編
第十一話 前
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ことで、午前中で授業が終わった。
私立のためか給食という概念がない聖祥大付属は、授業が終わって短い清掃時間を終えて、簡単なホームルームで終わりだ。ここまでの時間で十二時にもなっていない。放課後に、学校で適当にお弁当を広げて遊んで帰るか、家に帰って一度集合しなおすかは個人の自由だ。
ちなみに、僕はお弁当を持ってきている。いつもなら、誰か適当な人間を捕まえて一緒に食べるのだが、今日のところは悩まなくてもよかった。先約が昨日の夜に入っているからだ。
よっ、と机の端に引っ掛けている鞄を手に取ると僕はすぐに教室から出ようとした。しかし、それを呼び止める声が背後から聞こえ、僕は足を止めて後ろを振り向いた。
「ショウ、あんた、今日のお昼はお弁当なんでしょう? だったら、屋上で食べましょう」
流れる金髪を靡かせて、ちょこん、と弁当箱をつまんでアリサちゃんが言う。その背後には微笑みながら返事を待っているすずかちゃんの姿もあった。
よくある光景だ。僕はクラス内のグループをうろうろしているので、アリサちゃんたちとも一緒に食べることはある。いや、塾の関係やアリサちゃんの英会話教室や本を借りる関係で―――お金の関係から貸せないことが心苦しい―――すずかちゃんの家に行くことも考えれば、このクラスで一番仲がよく、一緒にお昼を食べる回数も一番多いのかもしれない。
いつもどおりの僕だったら二つ返事だっただろう。だが、今日は前述したとおり先約―――高町さんのことがあるので、そういうわけにもいかない。なにより、昨日の夜、「また明日」とは言ったものの具体的な時間を言っていなかった。僕よりも早く帰宅されてしまうと高町さんの家まで出向かわなければならなくなる。それはいささか時間の無駄だ。
ちなみに、昨日の夜そのことに気づいて携帯電話を広げたのだが、よくよく考えれば、僕は高町さんの携帯の番号を知らなかった。しかも、今は個人情報もかなり厳しいものがあって、一年生のときの連絡網にさえ電話番号は載っていなかった。
もっとも、載っていたとしても自宅の固定電話だから、夜遅くに電話するのはためらわれただろうが。
さて、そんなわけで、僕は断りの返事をする。
「ごめん、今日は用事があって帰らなくちゃいけないんだ」
「なによ、あたしたちより優先することなんでしょうね?」
どうやら、アリサちゃんの負けん気が出てしまったようだ。端から見れば、自分を優先しろという自己中心的な言い方に聞こえなくもないが、かれこれ二年以上の付き合いがある僕だ。彼女がこのような言い方しかできないことはわかっている。
「まあ、そうだよ」
少なくともアリサちゃんたちのお昼と昨日の出来事を天秤にかけると優先すべきは、やはり昨夜の出来事だろう。
僕が珍しく―
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