無印編
第十一話 前
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床を作って、すべてを明日に回してしまったせいで彼の名前すら聞いていない。フェレットくんは、自分のことを異世界からやってきたと言っていた。つまり、ある程度の文明が築かれており、固体を示すであろう名前も持っているのだろう。
ならば、この場で勝手に名前を決めるのは非常に拙いような気がするが、アリサちゃんとすずかちゃんは既に乗り気だった。
「そうねぇ……可愛い名前がいいわよね」
「だよね。あんなに可愛かったんだから」
昨日の話を聞いていた限りでは、彼は男のように思えるのだが。可愛い名前ということは、女の子風な名前をつけられるのだろうか。
僕は話の流れについていけないまま、ただ聞いていたが、エリザベスやら女物の名前が並ぶ。
「ねえ、ショウくんはどれが良いと思う?」
「そうよ、あんた一応飼い主なんだから決めなさいよ」
さて、困った。先ほどから並んだ名前はすべて女物。男であろう彼に名づけるには見当違いだと思うのだが。
僕は、期待したような表情で見てくる二対の目に視線を向ける。
明らかに、先ほどから候補に上がった中から選べとその目が語っていた。だが、それでいいのだろうか。そのそも、彼は交流がもてるのだ。万が一、名前がなかったとしても勝手に名づけるわけにはいかない。
だが、それをアリサちゃんとすずかちゃんに説明することもできない。もしも、僕はフェレットと会話することができるんです、なんていえば、頭がおかしくなったと思われてもおかしくないのだから。
さて、本当にどうしたものか、と腕を組んで迷っているところに始業を告げるチャイムが聞こえた。
「あ〜、もう、チャイム鳴っちゃったじゃない」
「アリサちゃん、名前はゆっくり決めれば良いじゃない」
「まあ、ずっとショウの家にいるなら、それもそうね」
どうやら、フェレットくんは学校のチャイムに救われたようだった。
アリサちゃんとすずかちゃんは、勝手に借りていた僕の前と隣の席の椅子から離れると自分の席へと戻っていた。
ふぅ、と安堵の息を吐いた僕の目の前には、広げられたノートと計算ドリル。
―――ああ、しまった。宿題終わってないな。
それから、五分の間で必死に脳をフル回転させながら、僕は宿題を終わらせた。
◇ ◇ ◇
さて、学校の授業というのは、一週間ごとのスケジュールが決められている。それらに関して殆ど変更はない。例外があるとすれば、災害のとき、あるいは、先生たちの都合があるときだ。そして、今日はその例外に該当していた。
三年生にもなれば、高学年と同等とはいかないが、それに準ずるだけのコマ数の授業がある。毎日、五コマの授業はある。だが、今日はどうやら先生たちが新年度の職員会議という
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