無印編
第十話 裏 (なのは)
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くれれば文句はなかった。自分だけの力―――魔法の力は手に入れた。後は、この力をどうやって使っていくか、だ。おそらく、同じような相手がいなければ魔法などこの世界では使えないだろう。もしかしたら、もっと他の用途があるかもしれない。それは、目の前のフェレットに聞くしかないのだが。
―――魔法を教えてもらおう。
そう思い、フェレットに声をかけようとしたそれよりも先に翔太が別のことを口にした。それは、高町なのはにとってはとても受け入れられないものだった。
「それで、イタチくんはこれからどうするの? 自分の世界に帰るのかな? あるいは、観光していくつもりなら、この周りでいいなら、僕が案内するよ」
「え?」と思わず聞き返してしまったのは、決してなのはのせいだけではないだろう。
せっかく力を手に入れたというのに、振るうのはたったの一回だけ? しかも、フェレットは自分の世界とやらに帰るという。それは、この宝石を返すということ―――つまり、魔法がなのはの手から離れていくということに他ならなかった。
そんなことは、なのはにとって、とても受け入れられるものでもなければ、許せるものでもない。
だが、ダメだよ、という否定の言葉を口にする前に、それよりも早くなのはにとって聞き覚えのある声が辺りに響いた。
「なのはっ!」
声に反応して振り返ってみれば、そこには全力で走ってくるなのはの兄―――恭也の姿があった。
「お兄ちゃん………」
本当は、自分がようやく手に入れた魔法の力を見て欲しかった。この力でバケモノを倒して、町の平和を護ったと知れば、きっと兄たちは褒めてくれるだろうと思ったから。だが、それは、兄が発しているとある感情の前に遮られた。
その感情とは―――怒り。
他人の感情を読むという能力は、なのはが他人から嫌われないために絶対に必要な能力だった。
「なのは、ダメじゃないか。夜に誰にも言わずに外に出ちゃ」
外に出なかったら、街はきっと破壊されていたのに。蔵元くんは、きっと死んじゃっていたのに。自分は、魔法の力を使って良いことをしたのになぜ、怒られるのだろう。そういう類の不満がなのはの中に芽生える。
だが、それをなのはは口に出すことができなかった。何か下手なことを言って怒っている兄に嫌われたくないから。だから、なのはは、思っていることとはまったく逆の謝罪の言葉を口にした。
なのはの中では、どうして? どうして? という言葉が渦巻く。助けたのに。あの蔵元くんを助けたのに、と。疑問と不満。それが溜まる。だが、なのはがそれを口に出せるはずがない。三つ子の魂百までではないが、もはやなのはの人に嫌われたくない、という願望は、魂にまで刷り込まれている。それが兄なら尚のことだ。だから、
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