無印編
第十話 裏 (なのは)
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グハートを見て呟く。
―――これが、なのはだけの力。
蔵元翔太でさえ、近づくことができなかった力。それを高町なのはは手に入れたのだった。
◇ ◇ ◇
その後、なのははあの得体の知れないバケモノ―――ジュエルシードの思念体らしが―――と戦った。
いや、結局は防御しかしていないので戦ったかどうかは非常に謎ではあるが。
だが、それでも翔太を護ったことには間違いない。触手を防ぎ、思念体の突進を防ぐ。
恐怖がなかったか、といえば、嘘になるかもしれない。だが、それよりもなのはにとっては、魔法の力を試したいという心のほうが強かった。
自分の中に感じられる巨大で、力強く鼓動する何かから湧き出る力を。
それさえ感じてしまえば、思念体など怖くなかった。あれはただの標的。あるいは、なのはが力を手に入れたことを示すための人形のようなものだ。
現に触手や思念体の突進を防いだときは、笑みがこぼれて仕方なかった。あの蔵元翔太が地面にはいつくばることしかできなかった相手を自分の力でねじ伏せられることが嬉しくて。自分だけの力を確かな形で実感できて。
翔太に背を向けなければならなかったことが非常に惜しいことをしてしまったと思う。きっとなのはは綺麗に笑えていたと思うから。それを憧れの蔵元翔太に、力を手に入れた最初の自分を見せられないことがとても心残りに感じられた。
そして、紆余曲折の末、どうにかなのはの魔法の力で思念体を封印できた直後、なのはは誰かに肩を叩かれ、振り返る。
そこには、ようやく命の危機から解放されて安堵した表情を見せている翔太がいた。そして、彼は口を開く。
「高町さん、本当にありがとう。君のおかげで助かったよ」
―――ありがとう。
最初、なのははこの言葉の意味を理解できなかった。
久しく言われた感謝の言葉だから。諦めて以来、一年近く言われることのなかった言葉。それを告げられた。あの蔵元翔太から。感謝の言葉を。なのはが持つ、なのはだけの魔法の力のおかげで。
その意味を理解したとき、なのははあの蔵元翔太からも魔法の力、自分の力を認められたようで、高町なのはという人間を褒められたようで嬉しかった。だから、なのはは胸の内から湧き出てくる歓喜を隠すことなく笑みに変えて頷いた。
「うんっ!」
この場に鏡を持ってこなかったことが惜しまれた。なぜなら、おそらく、自分は綺麗に笑えているだろうから。
◇ ◇ ◇
後処理は非常に簡単だった。フェレットが、ある一言を呟くとあっという間に壊れていた道路や塀は、元に戻ってしまったから。これも魔法か、と感心して思わず呟いてしまったほどだ。
なのはとしてはこのまま終わって
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