無印編
第十話 裏 (なのは)
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た。
―――引っ張られた右手から感じる温もり。人の温もりに。
右手から感じる翔太の掌の温もりは今までずっと走っていたせいか、なのはよりも温かいように思えた。
―――ああ、人の温もりってこんなだったんだ。
最後に人とを触れ合ったのはいつだっただろうか。もう年単位で誰とも手を繋いでいないような気がする。だからこそ、なのは驚いていた。
人の手はこんなにも暖かなものだったのか、と。
◇ ◇ ◇
夜の街を二人の小学生が走り、その背後を黒い物体が追いかけていた。奇妙な光景。だが、それに気づくものは誰もいなかった。やがて、少年と少女―――翔太となのはは、曲がり角を曲がり、直後に存在していた電柱に隠れるように身体を滑り込ませた。背後のバケモノがまっすぐ進んでいったのを見るとどうやら、彼らの隠れるという目的は達成したようだった。
「高町さん、まずは、来てくれてありがとう」
ズルズルと電柱に背中を預けて背中を滑らせ、座り込んだまま翔太は、なのはに礼を告げた。
ただ、その礼の言葉がなのはに響くことはなかった。なのはにとって、自分はただ呼ばれてきただけで、他に何もやっていないからだ。何も成していないのに礼を言われても嬉しくもなんともなかった。
「後は、魔法に関してなんだけど……」
きたっ! となのはは思った。なのはが来た目的は蔵元翔太ができなかった何かを成すことだ。それを希望とすることだ。その一部は先ほど聞いていた。すなわち『魔法』という言葉。だから、なのはは先ほどから、いつ魔法という言葉が出るのかを心待ちにしていたのだ。
翔太が隣で器用に二足歩行しているフェレットに赤い宝石を渡す。フェレットは、赤い宝石を器用にくわえるとそれをなのはに手渡した。
「それじゃ、僕が魔法の説明をさせてもらいます」
動物が喋った!? という驚きは無論あった。だが、その驚きはもはや今更のようにも思える。このぐらいで驚いているのなら最初に翔太の背後に見たバケモノを見た時点で驚いている。
さらに、そのフェレットが口にした魔法という言葉が、なのはの驚きを最小限に抑えていた。もはや、なのはの意識の中には魔法という言葉しか興味がなかった。
フェレットがゆっくりと魔法に関する説明を続ける。それをなのはは一言一句逃さないように神妙に聞いていた。
なぜなら、それはなのはに残された唯一の希望。今まで闇の中を歩いていたなのはが暗闇の中から抜け出せる最後の希望なのだから。少なくともなのはそう思っている。
だからこそ、聞き逃すなど間抜けなことで失敗したくない。なのはがフェレットの言葉を聞くのに真剣になるのはある意味必然とも言えた。
「さあ、僕の後に続いて、契約の呪文をっ!!
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