無印編
第十話
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りです」
「そんなこともできるのか」
素直に感心せざるを得ない。空間だけを切り取るなんて、物理的な概念を超えている。これこそ、まさしく御伽噺やアニメ、漫画の中でしか出てこない魔法そのものではないか。
高町さんの思念体と戦ったときの魔法といい、今のような魔法といい、実に好奇心を刺激してくれるようなものだ。どうやら、レイジングハートに適正はなかったものの、僕にも魔法自体の才能はあるみたいだから、もし時間があれば、可能な範囲でいいから教えてもらったのに。
しかし、残念なことにそれは叶わないだろう。
「それで、イタチくんはこれからどうするの? 自分の世界に帰るのかな? あるいは、観光していくつもりなら、この周りでいいなら、僕が案内するよ」
もう目的のジュエルシードとやらの封印は高町さんが先ほど終了させた。ならば、彼の目的である探し物は、すでに見つかっており、ここにいる理由もないだろう。僕はそう思ったのだが―――
「え?」
「え?」
「……え?」
三者三様の驚き。上から順番にイタチくん、高町さん、僕だ。
僕にはなぜイタチくんが驚くのか分からない。もう、彼の目的は終了したはずなのに。それとも、これ以上、ここに留まる理由があるのだろうか。
「イタチくん、君は他に―――「なのはっ!!」
驚いた理由を問いただそうとした僕の声をかき消すような大声が夜の道路に響いた。
その声から高町さんの名前を呼んだのは男性のものであることが伺える。あまりの大声に僕たちは、その声の方向を向く。そこにいたのは、肩を揺らしながら全力で走ってくる男性。ぱっと見た感じ、二十歳前後のように思える。
「お兄ちゃん……」
高町さんの名前を知っていることから、彼女の関係者かな? と思っていたら、案の定だった。高町さんのお兄さんは、僕たちを認識するとすぐさま、全速力でこちらに向かってきていた。
しかしながら、僕たちが見たときはかなり遠かったのに、その距離を全速力で走って息切れ一つないってどれだけの体力を持っているというのだろうか。そんな彼は、僕たちの元に着くと、すぐさま僕に不審な目を向けてきた。
「……君は?」
「こんばんは、僕は、高町さんの元クラスメイトの蔵元翔太です」
不審な目を向けられて、動揺してしまえば、不審者ですといっているようなものだ。あえて、堂々と挨拶までつけて自己紹介をおこなう。それが功を奏したのか、高町さんのお兄さんは、僕に不審な目を向けるのをやめてくれた。
「なのは、ダメじゃないか。夜に誰にも言わずに外に出ちゃ」
「……ごめんなさい」
お兄さんに窘められた高町さんは、素直に謝った。だが、高町さんが外に出たのは、彼女のせいじゃない。むしろ、
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