無印編
第十話
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突っ込んでくるようなものだ。それに対して高町さんの行動は、先ほどと同じだった。
―――Protection.
レイジングハートの声と共に再び現れる桃色の絶対障壁。先ほどは触手で、今度はその巨体が丸々突っ込んできたわけだが、高町さんにはまったく関係のない話らしい。負荷は増えているように思えるが、それでも高町さんは一歩も引くことなくその巨体を受け止めていた。杖をかざし、バチバチと障壁と触手の間で散らしている火花をじっと見ているように思える。
やがて、高町さんと思念体の力比べは、終わりを告げた。思念体の身体が四方に散らばることによって。しかし、その散らばった欠片でさえ、コンクリートの塀に刺さるほどの硬度と速度を持っているらしい。力は質量と速度で表せることから、欠片でもその力を持っていたのに、それらの塊を一歩も引かずに支えていた高町さんの障壁はいったいどれほどの硬度だというのだろうか。
「……これで終わり?」
「いえっ! まだですっ! ジュエルシードの封印をっ!!」
塊が散らばった程度では終わりではないらしい。気を抜きかけた僕を叱咤するようにイタチくんの声が響く。確かに、思念体は生きているようだ。高町さんから少し離れたところで、アスファルトを砕くほどの大きな塊から触手が伸びて、欠片を回収している。
しかし、イタチくんの声に反応した高町さんのほうが行動は早かった。高町さんは、再び杖を構え、抑揚のない声で呪文を紡ぐ。
「リリカル・マジカル―――ジュエルシード封印」
―――Sealing Mode.Set up.
レイジングハートが形を変える。杖の部分から桃色の光による翼が生えている。そして、レイジングハートから伸びる桃色の光の帯が、ようやく回収を終えた思念体の巨体に巻きついていた。それが苦しいのか思念体は、苦しむような声を上げている。
だが、そんなものはあっさりと無視して高町さんはさらに言葉を紡いでいた。
―――Stand by Ready.
「リリカル・マジカル。ジュエルシードシリアル21封印」
呪文を終えると同時に光の帯は思念体を握りつぶすように思念体を締め上げ、最後には思念体の断末魔と目を開けていられないほどの光を残して思念体は姿を消した。
「これで、本当に終わり……?」
「ええ、封印成功です」
僕は、ほっ、と胸をなでおろした。なぜなら、これで少なくとも僕にとっての命の危険性はなくなったからだ。もっとも、戦ったのは、高町さんで僕は後ろから見ているだけという情けない結果ではあったが。
しかしながら、酷い有様だ。アスファルトは陥没しているし、周りのコンクリート塀は、穴だらけ。さらに、思念体の欠片が、飛散したときの余波か、電柱が折れていた。
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