無印編
第十話
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していた。
もしかすると、彼女は、魔法を使うことに憧れる女の子だった? だが、そうなると嬉々とした表情を浮かべるならまだしも、イタチくんの言葉を一言一句逃さず聞こうという鬼気迫った表情とまるで赤い宝石が最後の希望のようにぎゅっと握る手を示すものがわからない。
もっとも、僕が考えたところで正解が分かるわけではない。こうだろうという答えを見つけることはできても、正解を見つけることなどできない。なぜなら、僕は蔵元翔太であり、高町なのはではないから。
彼女の気持ちを想像はできるが、体感することは不可能だ。その人の感情はその人のもので他人とは共有できないものである。
さて、そんな下らないことを考えているうちに彼女も赤い宝石との契約ワードの詠唱に入った。
あのアニメや漫画の中でしか言わないような僕からしてみれば恥ずかしい詠唱を高町さんはつっかえることなく言い切った。
その詠唱を終えた刹那、変化は始まった。
―――Stand by Ready, Set up.
そんな起動音のようなものが赤い宝石―――レイジングハートから聞こえ、直後、レイジングハートから飛び出した光が大気を振るわせた。
僕の身体にもビリビリと何かを感じる。まるで、何かの波動を感じているかのように。そして、それがとてつもなく大きなものだということは肌と本能で感じ取ることはたやすかった。
「なんてすごい魔力だ……」
イタチくんの呟きから、この波動が魔力であることが察せられた。しかも、彼の驚きようから考えるにこの力というのは感じたとおり途方もなく大きなものなのだろう。
そんな力が渦巻く中、高町さんは困惑しているだろう、と思っていたが、実際は違った。
―――彼女は笑っていた。
まるで念願のおもちゃを手に入れた子供のように笑っていた。
人が思いもよらない大きな力を手に入れたとき、それが権力だったり、財力だったり、腕力だったりするのだが、そういうものを手に入れたときの主だった反応は二つ。
一つは、その思わず手に入れてしまった力に困惑し、うろたえてしまうような反応。
もう一つは、その力に酔ってしまうこと。巨大すぎる力を手に入れてしまったことで、気が大きくなり、その力をむやみやたらと振り回してしまうことだ。
まさか、とは思うが、高町さんの反応は後者に近いように思われた。
だが、そんな僕の考えを余所に事態は進んでいく。
「想像してくださいっ! 貴方が魔法を制御するための魔法の杖と身を護る強い衣服の姿をっ!」
さすがに急に言われても、すぐに想像できるはずがない。現に、高町さんは考え込むように目を瞑った。しかし、それも少しの間だ。高町さんが瞑った目を開くと同時にレイジングハートの光が増し、彼女
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