無印編
第九話 後
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幸いにして動物病院は公園のすぐ近くにあったようだ。
今は、携帯電話に搭載されたGPS機能ですぐに自分の場所と行きたい場所が分かるのだから至極便利になったものだと思う。
近くの動物病院の名前は槙原動物病院。僕たちは、そこにイタチのような動物を連れ込んだ。
さらに幸いなことに診察の待ちの患者さんの姿はなく、僕たちが抱えているイタチ(?)を見てすぐに診察してくれた。
診察の結果、衰弱こそ激しいものの怪我自体は大したものではないらしい。
その診察結果を聞いて僕たちはほっ、と安堵の息を吐いた。
これで、もしも、もう手遅れです、なんて言われたら数日は必ずネガティブな状態が続いてしまっていただろう。
何はともあれ、イタチ君が軽い怪我だったことは喜ぶべき結果だろう。
診察自体はすでに終わって、これからのことになった。
そういえば、イタチが倒れて、酷く衰弱していたから、動揺して思わずつれてきてしまって、全然後のことを考えていなかった。
これが無責任の結果ということだろうか。拾ったところで飼えるかどうか分からないイタチを拾ってしまった。ならば、衰弱しているイタチをその場に放置したほうが正解とでもいうのだろうか。いや、それは違うような気がした。確かに無責任に拾って病院に連れてきたことは拙かったかもしれないが、この行為が間違いだとは思わない。
さて、連れてきた行為の良し悪しは後で考えるとして現実的なその後だ。
とりあえず、衰弱が激しいので、この病院で一日預かるような形になるらしい。一日もすれば元気になるらしいが、その際、誰が引き取るか考えて欲しいとのことだ。
僕たちは一瞬、顔を見合わせて困った顔をしたが、はい、といわざるを得なかった。それが連れてきた僕たちの責任というやつだろう。
そして、イタチを連れてきた僕たちのもう一つの責任は―――
僕は、塾の時間を思い出したアリサちゃんたちに急かさせるように動物病院を出たが、その直後、アリサちゃんには先に行くように言って僕は病院の中に引き返した。
「あの」
「あら? さっきの子じゃない。どうしたの? 忘れ物?」
僕は先生の言葉に首を左右に振ると用件を切り出した。
「お金、お幾らぐらいになりそうですか?」
そう、お金だ。
病院は慈善事業ではない。薬にしても包帯にしても診察にしてもお金がかかっているのだ。しかも、動物に対しては保健がきかない。最近は動物に対する保健もあるようだが、当然拾ってきたイタチにそんなものがあるはずがない。つまり、ここで僕が払わなければ、この動物病院に対する収入が一つ減るのだ。子供だからといって、いや、子供だからこそ容赦するべきではないと僕は思うのだが―――
「そんなこと心配し
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