無印編
第九話 後
[8/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
いって僕は彼を責めるつもりはない。彼を助けに行こうと決めたのは僕なのだから。イタチくんが助けを求めたから、と責めるのなら、最初から助けになどいかなければいいのだ。そうすれば、何も巻き込まれることはなかったのだから。もっとも、イタチくんの言うことが本当なら、助けに行かなくても巻き込まれていたみたいだが。
どちらにしても巻き込まれるのなら、抗うしかないだろう。
先ほどまでの恐怖感を飲み込んで僕は覚悟を決めた。いや、決めざるを得なかっただけだが。先ほどまでは逃げるという選択肢があったが、もう逃げるという選択肢は取れないのだから。背水の陣にでもなれば、人間肝が据わるものだ、と記憶だけなら三十年近くなる人生の中で初めて知った。
「それで、これはどうやって使うの?」
「まずは、契約が必要です。僕の言葉に続けてください」
言われたとおりに僕は、イタチ君の後に続けて言葉を紡ぐ。
―――我、使命を受けし者なり。
契約の下、その力を解き放て。
風は空に、星は天に。
そして、不屈の心はこの胸に。
この手に魔法を。
レイジングハート、セット・アップ! ――――
真面目に考えれば恥ずかしい言葉。だが、そんなことは言っていられない。僕とイタチくんの命がかかっているのだから。
さて、呪文を言い終わったのだが、まるで芸人のギャグがすべった時のようにひゅーという風が吹いた様な気がするだけで何も起きなかった。
何か嫌な予感がしたが、僕は意を決してイタチくんに尋ねた。
「……これで契約は終わり?」
だが、答えは返ってこない。しばらくイタチくんは考え込むような仕草をして、申し訳なさそうに再度頭を下げた。
「いえ……ごめんなさい。貴方に魔法の力はあるんですが、レイジングハートとは適正がなかったようです」
「つまり?」
「失敗ということです」
項垂れるイタチ君。いや、項垂れたいのは僕だ。せっかく覚悟を決めたというのに、決めた直後に契約に失敗して魔法は使えないという。もしかしなくても、大ピンチという奴である。
しかも、間の悪いことに先ほどまでアスファルトに埋まっていた黒い何かがアスファルトを抉ったときの衝撃でばらばらになっていた自身の再構成を終えようとしていた。
「……とりえあず、逃げようか」
「はい」
僕とイタチ君は、頷くと同時に駆け出した。
◇ ◇ ◇
どうする? どうする?
僕は背後から追ってくる恐怖を意図的に無視して考えながら走り続ける。どうやら、黒い何かは移動こそそれなりに早いものの思考能力は低いようである。曲がり角になるとどちらに曲がったか、必ず一度立ち止まって考える。つまり
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ