無印編
第九話 後
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うに知略で勝てとでもいうのだろうか。
「残念ながら、当てが外れたようだね。僕は、何の力も持たない小学生だよ。君の期待に応えることはできない」
「いえ、そんなことはないはずです。僕の声に応えてくれた貴方には力があります。魔法の力が」
もう驚かないと思っていたが、その考えはいともあっさりと覆された。
―――魔法の力。
魔法。それは、御伽噺の中でしか使われない言葉。もしも、自由にこんなことができたらいいのに、という人々の願望によって生まれた妄想の産物。現代で魔法が使えますと言おうものなら、笑いものになるか、本気で心配されるかのどちらかだろう。
だが、僕には一笑することができなかった。輪廻転生という超常現象を体験している僕としては。
「でも、残念ながら僕にそんな力があったとしても、今すぐに使いこなせるわけがないよ」
そう、いくら力があっても使い方が分からなければ宝の持ち腐れだ。
電気にしても、家電製品の類がなければ、ただのそこに存在するだけのエネルギーに過ぎないのだから。
「ええ、分かっています。だから―――」
彼が、その次の言葉を紡ぐことはできなかった。
なぜなら、唐突に気配を感じたから。足音を聞いたとかそんなものではない。なんとなく感じたのだ。ただの男の勘だ。だが、その勘を否定することはできなかった。
自分の上空に気配を感じて反射的にその場の地面を強く蹴って、道路の真ん中から端っこにイタチの彼を抱きかかえながら、転がるように移動する。我ながら奇跡的な反応に近いと思った。もう一度やれといわれても無理だろう。
そして、その刹那、先ほどまで僕が立っていた場所にはあの黒い得体の知れない何かが道路のアスファルトを抉って埋まっていた。
―――なんて馬鹿げた力。
一体、アスファルトを抉るなんて芸当がどうやったらできるのだろうか。道路の工事といえば、ドリルのような掘削機をつかってようやく削れる程度。それを一瞬で抉るのだ。そこに秘められた力がいかほどのものか、僕の頭では計算することはできない。ただ、生身の人間が相対すればすぐさまミンチになるような力であることは理解できた。おそらく、あと一瞬、遅ければ、僕はあの抉れたアスファルトの下でミンチになっていただろう。
それを想像すると今更のように恐怖が腹の底から這い出していた。
「無理だろ。あれに勝る力なんて……」
「そんなことはありません! 貴方の持つ魔法の力とこのレイジングハートがあれば」
そういって、イタチくんは、首に下げていた宝石を器用にくわえて僕に渡してきた。小さな丸い宝石。だが、不思議と鼓動していて生きているようにも思える。
今度は鉱物生命体か……?
だが、答えは違った。デバイスと
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