無印編
第九話 前
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は聞こえなかった。
さて、そんな偶然がありえるだろうか。離れているなら分かる。だが、僕たちは並んで歩いていたのだ。しかも、アリサちゃんとすずかちゃんの間に僕が入るように。ならば、僕だけ聞こえたというのはおかしな話だ。そう、人知を超えた現象でもなければ。
人知を超えた存在。それで僕はピンときた。
「……なるほど、幽霊か」
「え?」
「は?」
僕の出した結論に二人とも呆れたような驚いたような声を上げた。
だが、僕はあながち間違っているとは思えない。なぜなら、幽霊のような超常現象を肯定するような存在が、今、まさしくここに存在しているのだから。輪廻転生と呼ぶしかない僕が存在しているのだ。ならば、幽霊が存在したところでおかしい話ではないだろう。特にここの雰囲気は幽霊が出るにはぴったりの雰囲気で、時刻は現世と幽世が重なる逢魔時だ。これ以上の状況はない。なにより、彼女たちに聞こえず僕には聞こえるという状況から考えても、何らかの超常現象が働いていると見て間違いないだろう。
「あ、あああ、あんたなに言ってるのよっ! 幽霊なんているはずないじゃないっ!」
アリサちゃんが明らかに震えた声で僕の言葉を必死に否定している。もしかして、こういった話は苦手だったのだろうか。それなら悪いことをしてしまった。
それじゃ、すずかちゃんはどうだろう? と白い肌をさらに白くしているアリサちゃんからすずかちゃんに視線を移すとどこか浮かない顔をしていた。
「すずかちゃん? もしかして、すずかちゃんも幽霊とか苦手?」
「ちょっと! 『も』ってなによ!? 『も』って! あたしは全然へいきなんだからねっ!!」
アリサちゃんが横で喚いているような気がするが、とりあえず、今はすずかちゃんを優先する。だが、すずかちゃんはすぐに僕に気づいたようで、はっ、と顔を上げるといつもの笑みを浮かべてくれた。
「ううん、なんでもないよ。急にショウくんが幽霊とかいうからびっくりしただけ」
「なら、いいんだけど」
しかし、どうしたものだろうか。おそらく、幽霊というのはあながち間違いではない。僕しか声が聞こえず、アリサちゃんたちには聞こえないという超常現象なのだから。
ここで、僕たちが取れる道は二つだろう。
「どうする? 進む? 戻る?」
たぶん、声のした方角から考えるにこのまままっすぐ進めば、その現象に出会うことになるだろう。僕としては、好奇心から進んでみたい気持ちもあるのだが、怖いという気持ちも当然ある。
僕が一人だけなら、おそらく好奇心が勝って進んだだろう。だが、ここにいるのは、僕だけではない。アリサちゃんとすずかちゃんもいるのだ。僕のわがままで彼女たちの恐怖心を無視するわけにもいかない。
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