無印編
第九話 前
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なかったのだが、そう、あれは、アリサちゃんや忍さん、高町さんのお父さんやお母さんを見たときに似ている。つまり、僕のうろ覚えである『とらいあんぐるハート3』の断片を覗き込んだときだ。
まさか、この場所も『とらいあんぐるハート3』に関係あるのか?
「どうかしたの? さっきからぼ〜っとして」
どうやら、思考に没頭してしまったらしい。もはや、『とらいあんぐるハート3』に関しては、霞がかかった記憶しかない故にこうして考えるときは、周りが気にならないほどに思考の奥深くにいかなければならない。それは確かにアリサちゃんからしてみれば、ぼ〜っとしているように見えたのだろう。
「あ、いや、なんでもないよ」
「大丈夫? 風邪とかだったら無理しないほうがいいよ」
「そうそう、あんたなら一日ぐらい休んでも問題ないでしょうし」
「いや、本当に大丈夫だから。それよりも、早く―――」
行こう、と続けようとして、僕の言葉は途中で止まってしまった。なぜなら、唐突に僕の頭に声が響いたからだ。たすけて、というか細い声が。
「どうしたのよ、ショウ? 本当に変よ」
「……今、声が聞こえなかった? 助けてって声が」
僕の問いにアリサちゃんとすずかちゃんは顔を見合わせるが、何をいってるんだろう? と明らかに疑問に思う表情が浮かんでいるということは彼女たちは聞こえていないだろうか。
「別に……」
「何も聞こえなかったかな」
「そう……」
この場に三人もいて、たすけて、という声は僕にしか聞こえなかった。ならば、これは僕の気のせいと断じるべきだろうか。もしも、聞こえた声が切実に救助を求める声でなかったら、僕は早々に気のせいということにしてこの場を立ち去っていただろう。だが、もしも、ここで無視して後日、新聞にこの公園で変死体発見、なんて記事が載ったら後味が悪すぎる。
しかし、僕だけ聞こえるなんて偶然が―――っ!?
とか、思っていたら今度は二度目。しかも、今度は、一度目よりもはっきり聞こえた。
「ほら、もう一回、助けてって」
「……何も聞こえなかったわよ」
呆れたような顔をして僕のほうを見てくるアリサちゃん。その表情にはありありとあんた頭大丈夫? と言いたげな表情が浮かんでいる。
「ねえ、ショウくん本当に大丈夫? お家に帰ったほうがいいんじゃ」
アリサちゃんはともかく、まさかすずかちゃんにまで言われるとは思わなかった。しかし、本当に聞こえていないとなると、一体どういうことだろうか。二度目は一度目の掠れたような声ではなく、はっきりと『助けて』と聞こえた。さすがにこれをアリサちゃんたちが聞き逃したとは思えない。つまり、立てられる仮説は、僕には聞こえたが、アリサちゃんたちに
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