無印編
第九話 前
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い。
「ぼちぼち考えるよ」
―――十年後、僕は一体どんな将来を描いているんだろうか。
◇ ◇ ◇
そろそろ日が暮れようかという時間帯。太陽が水平線の向こう側に消えようという時間帯。俗に言う夕方に僕とアリサちゃん、すずかちゃんは近くの自然公園を抜けて僕たちが通う塾への道のりを歩いていた。
最近は、アリサちゃんの車を使うことは少なくなった。おそらく、彼女の精神的な成長なのだろう。自立を望むといえばいいのだろうか。思春期の手前に見られることで、どちらかというと小学校の高学年ぐらいから見られる傾向なのだが、アリサちゃんの精神年齢の高さから考えると妥当なのかもしれない。
そんな理由で僕たちは、徒歩で自然公園を抜けて塾へと向かっていた。
適当な話題を振りながら僕たちは自然公園を歩く。途中で、犬に吼えられていたが、アリサちゃんが英語で威嚇するとすぐに静かになっていた。犬には英語が通じるのだろうか。
それは、ともかく、このまままっすぐ行けばあと二十分もあれば、自然公園を抜けられるというところでアリサちゃんが何故かわき道へと進路を変えていた。
「あれ? こっちだよね」
「こっちのほうが近道なのよっ!」
なにが嬉しいのか、笑いながら言うアリサちゃん。どうやら彼女の中でこの道へ行くことは決まっていることらしい。
なるほど、確かに子供はこういう隠れた道が好きだ。大人から見れば非効率。ただ疲れるような道も、近いからという理由だけで行こうとする。少し前に精神年齢が高いと思ったのは気のせいだったのだろうか。
僕は、隣でどうする? と問いかけるように微笑んでいるすずかちゃんにふっ、と力を抜いた笑みを浮かべる笑みで答えた。
たぶん、僕たち二人の笑みはありありと「仕方ないな」という言葉が浮かんでいたことだろう。おそらく、アリサちゃんに見られたら、怒られるに違いない。
「ちょっと! なにやってるのよっ!! 早く来なさいっ!!」
どうやら、僕たちは笑みを見られなくても怒られ運命だったようだ。
さて、アリサちゃんに追いついて僕たちはわき道を歩き始めた。
歩いてみて分かったが、整備されているにも関わらず、この道が使われない理由がよくわかる。周りは木々で囲まれており、夕方だというのに薄暗い。それが夕日の紅と重なって実に薄気味悪い雰囲気を醸し出している。
しかし、この道どこかで見たことがあるような気がするんだけど……気のせいだろうか。
いわゆる既視感というやつである。だが、僕の記憶が確かなら、この道を歩くのは初めてであり、決して過去に歩いた記憶はない。だが、どこかでこの景色を見たことがあるような……?
なんだか、頭に残る違和感。最近は特に感じたことは
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