無印編
第九話 前
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、異形に勝てず、その異形そのものを取り逃していた。
―――まあ、夢か。
僕は先ほどまで見ていた夢をそう結論付けて気にしないことにした。夢など気にするものではない。
しょせん、頭の中で処理されたイメージの残滓に過ぎないのだから。それよりも、今日もまた大変な日々が始まる。三年生に進級したからといって急に彼らが大人びるわけでもないのだから。さらに昨日のクラス替えじゃ、またクラスの半分ぐらいがごっそり入れ替わったことだし。
そこまで考えて思った。
ああ、なるほど、分かった。あの夢が示唆したものが。
おそらく、男の子は僕で、異形の怪物は、新しくクラスメイトになった面々だろう。
―――なんてね。
そんな下らないことを考えながら、僕はパジャマからまだ新学期が始まったばかりで汚れの目立たない制服へと着替えた。
◇ ◇ ◇
時刻は昼休み。春の陽気と言っても過言ではない気温の中、気持ちいい春の日差しを浴びるために僕はアリサちゃんとすずかちゃんと一緒にお弁当を食べるために屋上に来ていた。ところで、僕が通っていた小学校は屋上に鍵がかけられていて立ち入り禁止だったものだが、聖祥大付属小学校は生徒に解放されているらしい。転落防止用のフェンスも完備されており、普通に弁当を食べたりする分には問題ないようである。
「将来の夢か」
お弁当に入っていたミートボールを口に運びながら僕は先ほど先生が授業の先生が言っていたことを呟いていた。
先ほどの授業は、社会だった。その中で先生が様々な職業を紹介し、次の授業までに各々が自分の好きな職業について調べるというものだった。そして、最後に先生が言った一言が僕の心に波紋を広げた。
――――将来なにになりたいか、今から考えるのもいいかもしれませんね。
社会の先生の今日の授業の最後の言葉だ。
聖祥大付属小学校は私立の小学校というだけあって、公立とは違って、担任の先生がすべての授業を行うわけではなく、一つの教科ごとに先生がついている。人は、おおよそ自分の知識の三割程度しか人には伝えられないそうだ。ならば、この方法は確かに効率がいいのだろう。
ちなみに、今年も担任は一年生のときから変わっていない。
さて、将来の夢か。僕は一体何がしたいのだろう?
「アリサちゃんたちは将来の夢って何か考えてる?」
僕は、今日、一緒にお弁当を食べていたアリサちゃんとすずかちゃんに聞いてみる。
「う〜ん、そうねぇ、あたしは、パパもママも会社の経営をやってるからたくさん勉強して後を継がないと」
「私は機械系が好きだから、工学部で勉強したいな」
なるほど、とても小学生の答えではないが、納得である。
もし
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