第二十七話 本分を尽くす
[6/6]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
……。ヤン准将、宇宙艦隊司令部ではどう見ているかね」
「宇宙艦隊司令部でも攻略は難しいだろうと見ています。短期間で攻略するには大軍を用い力攻めで要塞を落すしかない、成功すれば良いですが失敗すれば……」
「徒に損害を被るだけか……」
キャゼルヌ先輩の言う通りだ。そして現状では同盟軍にそのような損害を受け入れる余裕は無い。敗戦続きで軍の回復が間に合わなくなりつつあるのだ。徐々に徐々にだが戦える艦隊が少なくなりつつある。艦隊に於いて数は満たしても新兵や実戦不足の兵の占める割合が増えつつある……。
「頭の痛い事だな」
シトレ元帥が苦い表情で呟く。無理もないと思う。ここ近年、同盟軍は帝国軍の前に敗退を重ねている。その事で政府、市民の軍に対する非難は募る一方だ。前回の戦い、同盟はブラウンシュバイク公に対して倍以上の兵力を用意した。公を恐れたと言う事よりも勝たなければならない戦いだったからだ。これ以上の敗北は軍への信頼の失墜につながる……、しかし軍は敗れた……。
それ以後、政府内部ではイゼルローン要塞攻略を軍に打診する声が上がった。声高にではない、密かにだ。軍上層部でもそれを検討し始めた。イゼルローン要塞を落せば帝国軍の攻勢を押さえられる。軍の再編にも余裕をもって取り掛かれる。今なら可能性が有るのではないか……。
しかし今回の組織改正によってその可能性も限りなく小さくなった。
「今回の組織改正、推し進めたのはブラウンシュバイク公だと聞きましたが」
「そのようだな、フェザーンからの報告書ではそう書いてある。手強い相手だ、こちらの打とうとする手を未然に潰してくる……」
シトレ元帥の言うとおりだ。手強いし厄介だと言える。前任者のミュッケンベルガー元帥は威圧感を感じさせる指揮官だった。だがブラウンシュバイク公からは息苦しさを感じる。喉を少しずつ絞め身動きを出来なくさせるような怖さが有る。
イゼルローン要塞攻略か……。可能ならばベストの選択だろう。しかし大軍を動かしても攻略が成功する可能性は低い、となれば……。
「ヤン、どうした」
気が付けばキャゼルヌ先輩とシトレ元帥が私を見ていた。
……話してみようか? 試してみたい作戦は有る……。
「いえ、何でもありません」
先ずは宇宙艦隊司令部で相談してみるべきだろう、クブルスリー司令長官は話の分からない人じゃない。それに宇宙艦隊司令部の中でもブラウンシュバイク公の手強さは皆が身に染みて理解している。先ずはそちらで検討してからだ。シトレ元帥に話せばそれが決定事項になりかねない。司令長官を飛び越して作戦本部長に直訴した形になる、それは避けるべきだ。先ずは宇宙艦隊司令部で相談してみよう……。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ