第二十七話 本分を尽くす
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に答えてしまう部下、周囲の方が困ってしまう……。
「どうしました、落ち着きませんか。ケンプ提督、レンネンカンプ提督、ファーレンハイト提督」
「……まあ、そうです」
俺が答えるとレンネンカンプ提督が後に続いた。
「我ら三名は武勲を挙げていません。正直選ばれた事に困惑しています」
「卑しい平民と食い詰め貴族が武勲を挙げてもいないのに昇進して艦隊司令官になった、ですか?」
公の言葉に顔が強張った。俺だけではない、皆が顔を強張らせている。その通りだ、心無い誹謗ではあるが否定できない。それを公が口にした。
「私が卿らを選んだ理由は一つ、戦場で安心して一軍を任せられる指揮官だと判断したからです」
「……」
安心して? 安心してとは何だろう? 能力が有るという事か? それとも信頼しているという事か? 謎めいた言葉だ、皆が顔を見合わせた。
「私は平民として生まれ公爵になりました。爵位などと言う物が戦場では何の役にも立たない事は私自身が一番よく知っています。そんなもので勝てる程戦場は甘くない、そうでしょう」
確かにそうだ。戦場では爵位など何の役にも立たない。
「馬鹿な指揮官を用いれば兵に不必要な犠牲を払わせることになります。私は宇宙艦隊司令長官です、戦場で無意味に兵が死んでいくのを間近で見る事になる。私はそんな理不尽には我慢できない。だから卿らを選びました」
公が厳しい目で俺達を見ている。先程までの柔和さなど欠片も感じられない。押し潰されそうな圧迫感を感じた。
「卿らは指揮官としての本分を尽くす事を考えなさい、出来るはずです」
「本分、ですか」
俺が問いかけると公が頷いた。
「そう、勝つことと部下を一人でも多く連れて帰ること」
「……」
「指揮官はそれ以外の事で悩む必要は有りません。兵の命以上に大切なものなど無い……」
そう言うと公は表情を和らげて“今日は好きなだけ楽しんでください”と言い残して傍を離れた。ミューゼル大将が後を追った。
「随分と厳しい事を言われたな」
ケンプ提督が呟くとメックリンガー総参謀長が答えた。
「歯痒かったのだろう」
「歯痒い?」
ケンプ提督の言葉にメックリンガー総参謀長が頷いた。
「公は平民からブラウンシュバイク公爵家の養子になった。帝国最大の貴族の当主になったのだ。風当たりは我々などよりずっと強かったはず、そうではないかな」
「なるほど、確かにそうだな」
皆が頷いている。平民や貧乏貴族が正規艦隊司令官になっただけでこの騒ぎだ。総参謀長の言う通りだろう、公の時はどれほどの騒ぎだったか……。この程度の詰まらぬ事に何を悩んでいるのか、公にしてみれば歯痒かったに違いない。
「我々は選ばれた、どうする?」
「……選ばれた以上、応えねばなるまいな」
総参謀
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