本編前
第八話 裏
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人残っているのは、一人ということを強調させるようで嫌だった。
だが、それは家の外に出ても一緒だった。
周りを見れば、ゴールデンウィークということで遊びに出る自分と同年代の少年少女。三人から五人のグループでどこかに遊びに行こうといっている。
それを思わず目で追ってしまうなのは。その光景は、少し前までなのはが喉から手が出るほど望んだ光景だったから。今も羨ましいとは思う。だが、その光景が欲しいとは思わない。その光景を望まない。望んでも無駄だと諦めているから。あのときに思い知ったから、自分ごときがその光景を望むのは高望みが過ぎることを悟ったからだ。
目で追ったグループを忘れ去るように目を逸らしたなのはは歩みを続ける。
――――どこに行こう?
なのはの心情は迷う。
◇ ◇ ◇
なのはは一人公園のブランコに乗っていた。
ブランコの近くにある柵の向こう側に見える広場ではなのはと同年代の男女がサッカーボールで遊んでいた。
なのはが見たことない人間が全員であることから、聖祥大付属小学校の生徒ではないのだろう。
その光景を目に入れながら、一緒に遊んだような気分に浸った。
しかし、それも一時間程度のことだ。なぜなら、気づいてしまったから。その気分から抜け出したときの更なる寂寥感に。
結局、なのはは、すぐにその場から立ち去った。
◇ ◇ ◇
なのはは、自分がいるべき場所、いてもいい場所を探して町中を歩き回ったが、そんな場所はどこにもなかった。
どこにだって人がいて、どこにだって遊んでいる人たちがいて、一人である自分はそこにいる権利さえ失ったような気がした。
街中を彷徨い、彷徨い、彷徨い、気がつけば、日が暮れかけている。夕刻だった。
「帰ろう」
この日、初めて口にした言葉がそれだったことに後でなのはは気づいた。
◇ ◇ ◇
家に帰ると、まず母親が夕飯の準備をしているのだろう。おいしそうな匂いがなのはの鼻をくすぐった。
手を洗い、リビングへ入ると桃子がなのはの予想通り、夕飯の準備をしていた。
「あら、なのは、お帰りなさい」
「ただいま」
そのままリビングにいようか、と思ったが、いても特に母と話すこともない。いや、むしろ話しかけられても困る。何もなのはには話すことがないのだから。だから、なのはは逃げるように自分の部屋へと戻った。
◇ ◇ ◇
父親と母親となのはで晩御飯を食べて、テレビを見てお風呂に入って寝た。
なのはの帰宅後の生活を記せばただそれだけだ。
起きていても、特になにもすることがないなのはは、ベットに入って電気を
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