本編前
第八話
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?」
ゴールデンウィークが始まった日の朝、突然、親父がそんなことを言い始めた。
僕の親父は、アリサちゃんの親が社長をやっている会社の子会社の開発部に所属している。ちなみに、アリサちゃんのことは内緒にしている。黒い髪にスポーツ刈りにした頭。四角い眼鏡をかけた一般的な中年だ。自慢としてはメタボというには程遠いお腹だろうか。
「え? なんで?」
僕としては、今更、遊園地とか連れて行かれても困惑するだけだ。
そもそも、何に乗っていいのかも分からない。ジェットコースターとかなら乗ってもいいかな、と思うが、この身体は小学二年生の平均身長より少し低い120センチしかないのだ。身長制限があるジェットコースターには乗れないものが多いだろう。
だからと言って、誰にでも乗れるメリーゴーランドやゴーカートに乗るのはさすがに恥ずかしい。この身体が小学生だとしても、だ。
だが、僕の返答に聞いてきた親父は困惑したような顔をした。
「父さんの友達が今年は、家で過ごそう、といったら息子に泣かれたそうだ」
「そういえば、ショウちゃんはそんなことまったくないわね」
親父と話していると何故か、母親も入ってきた。
僕の母親は実に温厚な性格をしており、いつも微笑んでいる。ふわふわのショートヘアが柔和なイメージを加速させている。実際、怒られた事はないのではないだろうか。もっとも、この年になって親から怒られるようなことはしない。
「小さな頃からそう。夜泣きはしないし、着替えも自分で出来ちゃうし、歯磨きも、おまけに勉強だって聖祥大付属の特Aランクの特待生だし、たまにはお母さんの手を煩わせてもらえない?」
「いや、自分で出来るのに何でそんなこと……」
確かに母さんの言いたいことは分かる。要するに僕がよほど子供らしくないのだろう。他の母親が言うような苦労を母親もしてみたいのかもしれない。しかし、子供にとっては自然であっても、精神年齢が二十歳を超える僕が母親に着替えを手伝ってもらったり、歯磨きをしてもらったりするというのは恥ずかしいことこの上ない。
「それに、僕じゃ出来なかったかもしれないけど、秋人には出来るじゃないか」
僕のすぐ傍で何が楽しいのか、母親のゴムひもをひっぱりながら、キャッキャッと笑う秋人。
きっと、これから僕に頼まなくても秋人が僕の分まで母親たちの手を煩わせてくれるはずだ。
「でも」
「いいから、僕の分まで秋人の面倒を見てよ。まあ、手に負えなくなったら僕も手伝うからさ」
僕が秋人の保育をすることは可能だ。だが、僕は殆ど秋人の面倒を見ていない。母親と父親に任せたきりである。僕の時には体験できなかった育児をやって欲しいと思ったからだ。だから、僕は本当に少ししか秋人の面倒を見て
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