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第七話 裏 (なのは)
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確実に彼女の心のひびを広げていく。
そして、心の限界が来たのは二年生に進級してすぐのことだった。
クラスが変わったことは、親しい友人がいないなのはにとってどうでもいいことだった。
だが、そのクラスで偶然耳にした事実が彼女のひびが入った心にとどめを刺す。
成績順のクラス替えのことである。
なのはは、その女の子はクラスが変わったことで母親に怒られたという話を偶然聞き取ったものだ。
だが、その事実がなのはの心に限界を与えた。
クラスが下がったということは、成績がそこまで下がってしまったということだ。前は上のクラスだったのに。彼女が理想とする蔵元翔太とは別のクラスになってしまうほどに。
彼女の理想が手の届かない位置に遠のいてしまったような気がした。
そして、心の限界がきた次の日、なのは学校を休んでしまう。特に理由なんてないのに、だ。
心の限界から来た自らの行動。だが、それをもなのはを苦しめる。
身勝手な理由で学校を休んでしまった自分は、もはやいい子にはなれない。お父さんもお母さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも相手にしてくれない。友達も出来ない。誰にも相手にされない。そう思い込んでしまった。
もはや家族のいい子を演じる気力も学校に行く気力もなかった。
一日中、ベットの中で過ごす日々。今日でその生活が何日目かなんて覚えていない。今日が何曜日で、何日で何月かなんて時間の感覚もない。
何気なく一年生のときに進学祝いと万が一のときのために買って持った携帯を開く。
そこにはアナログの時計があり、現在時刻と今日の日付が示されていた。
それらを無視して、なのはは携帯のキーの一つを押してアドレス帳を呼び出す。
そこに記された名前は実に数少ないものだった。
『お父さん』『お母さん』『お兄ちゃん』『お姉ちゃん』『お家』『翠屋』
以上六つがなのはの携帯に登録された電話番号だった。
入学する前は、この携帯のアドレスが増えることを想像しながら眠りについたものだ。だが、もうそれも幻想でしかない。
なのはは電源ボタンを押したままにすると携帯を電源から切った。鳴らない電話に意味はないからだ。
何気なく携帯を切ったなのはだったが、何をするわけでもなくごろんとベットの上を転がる。目の焦点はあってなく、虚空を見つめているのと変わらない。
―――私、なにしてるんだろう。
自問自答しても答えは出ない。
そんななのはの耳にドアを三回ノックする音が聞こえた。なのはの部屋は鍵がついており、ずっと鍵をかけたままだ。
「なのは、蔵元くんがお見舞いに来てくれてるけど……」
蔵元、蔵元翔太っ!
ローギアだったなのはの脳が一気に加速した。
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