本編前
第七話
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程度では引きこもりの女の子にカウンセリングなんか到底無理な話だ。
結局、僕に出来ることなんて、学校で調べたことをこうしてご両親に伝えることぐらいだった。
後は、彼ら家族の話だ。残念なことに赤の他人である僕にはこれ以上関われることがない。
伝えることも伝えたので、僕は鞄を手に取り、帰る準備をした。
「それじゃ、お邪魔しました」
「今日は、本当にありがとうね」
僕が鞄を手にとってリビングから玄関へと移動する時の挨拶、それに応えるように今度は高町さんのお母さんがお礼を言ってくれる。
「あの―――」
何度もお礼を言ってくれるのが忍びなくて、何か言葉を残そうとした。だが、何を言っていいのか分からない。まさか、こんなところで「ケ・セラ・セラですよ」なんて言えるはずもない。
僕には引きこもった経験もないし、親になった経験もない。だから、引きこもった子供がいる親にどういう言葉を残していけばいいのか分からない。だから、ありふれた言葉で応援するしかなかった。
「頑張ってください」
こんな言葉しか出てこない自分が口惜しい。だが、そんな言葉でも嬉しく思ってくれたのだろうか、高町さんのお父さんと母さんは手を振って僕を見送ってくれた。
高町さんの家の玄関を出て、門戸を出たところで改めて高町さんの家を振り返る。
ほんの少しの邂逅だったが、それでも高町さんのお父さんとお母さんが人間が出来た人というのは分かった。先生が言っていた死を覚悟したというのは分からなかったが。
だから、今の僕には祈ることしかできないけれども、彼ら家族が上手くいけばいいな、と思った。
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