本編前
第七話
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消えていった高町さんのお母さんを見送りながら思う。
士郎さんって誰だ?
自問自答するまでもなかった。話の流れから考えれば、高町さんの父親以外にはありえない。名前もどこか聞いたことがあるような気がする。
ということは、現実では生きているのか。
すずかちゃんといい、高町さんの父親が生きていることといい、どこか『とらいあんぐるハート3』と類似性はあるものの、まったく同じというわけではないらしい。ゲームの世界とまったく同じというのも、現実に生きているような気がしないので怖いのだけれども。
そんなことを考えていると、高町さんのお母さんが消えていった奥から入ってくる人影が見えた。
僕は、座っていた椅子から降りると、テーブルの横に立ち、彼がリビングに入ってくるのを待つ。
やがて、奥から出てきたのは一人の男性。がっしりとした体格と若い顔立ちだけを見れば、高町さんのお兄さんといわれても納得できそうだ。
ただ、雰囲気がやっぱりどことなく違う。そこらへんの大学生とはまったく。人生の重み、経験の重みとでもいうのだろうか。それが柔和な雰囲気の中にどっしりと現れていた。
何はともあれ、自己紹介だ。
「初めまして。高町さんの同級生の蔵元翔太です」
ペコリと頭を下げる。
「あ、ああ。俺は高町士郎。なのはの父親だ」
僕の突然の行動に面食らったようだったが、きちんと挨拶を返してくれた。僕の行動に驚くのも無理はない。こんな行動を取る小学生がいたら誰でも驚く。だが、これから話すことは小学生の戯言と取られては困るのだ。
「はい、自己紹介はそこまでにして座ったらどう?」
そういいながら、高町さんのお母さんは、暖かそうな紅茶が入ったカップをテーブルの上におく。
僕と高町さんのお父さんは、僕と一瞬目を合わせると、椅子を引いて座り、高町さんのお母さんもその隣に座る。そして、僕は、なんだか緊張したけれども彼らの対面に座った。
まるで、怒られる子供と大人の構図だな、と全然関係ないことを考えながら、まずは何を話そうと運ばれた紅茶を口にした。
僕が紅茶を飲む一方で、目の前に座る高町さんのご両親は至極真面目な顔をしていた。やはり、娘に関することだ、と最初に言ったからだろうか。高町さんのお父さんは、高町さんのお母さんから話を聞いたのかな。
どちらにしても、彼らをこれ以上待たせるのは忍びないと思い、僕は口を開く。
「僕も世間話をしにきたわけではないので単刀直入に聞きます。高町さんの不登校の原因に心当たりはありますか?」
あまりに単刀直入すぎただろうか。正面に座る二人は、驚いたという表情を子供の僕に隠すことはなかった。いや、あまりに急すぎて隠せなかったというのが正しいのかもしれない。
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