魔都の攻防
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し」
「しかし」
責任を問うつもりはなかった。だが役のその真摯な声に何かを感じずにはいられなかった。
「役さんも縛られていますし」
「これですか!?」
役はそう言って微笑んだ。見れば彼の手は自由となっている。
「え・・・・・・」
これには流石の風見も驚かざるにいられなかった。
「縄抜けですよ」
役は風見を元気付けるような声で言った。
「私の特技の一つでして。私が古武術をしているのはご存知ですね」
「はい」
「その中に関節を外す技もありまして。それで抜けたのですよ」
「そうだったのですか」
「意外でしたか」
「いえ」
風見はそれには首を横に振った。
「どうも貴方は多くの技能を身に着けておられるようですしそれ程には」
「そうですか」
役はここで風見が自分のことに何か察しをつけているのでは、と思った。だがそれを口に出すことはなかった。
「ではロープをほどきますので」
「お願いします」
風見は身体の後ろを差し出した。役は素早い動きで彼の両手を縛るロープを解いた。
「これでよし」
風見は自由になった両手首を動かしながら言った。
「じゃああとはここを出るだけですね」
「ええ」
風見は頷くと鉄格子の前に来た。そして左右に引っ張った。
「ムン!」
それで鉄格子は破壊された。人一人が通れる隙間が開いた。
「行きましょう」
「はい」
二人はすぐにその間を通り抜けた。そして廊下に出た。
角を曲がる。丁度そこに戦闘員が一人いた。
「ムッ」
その戦闘員は慌てて身構えようとする。だが風見はそれより速く彼を手刀で倒した。
「今声を立てられたら困るのでな」
二人はその戦闘員が息絶えたのを確認すると先へ進んだ。
その時ドクトル=ゲーは基地の最深部にいた。
「開発は進んでいるか」
そして白服に身を包んでいる戦闘員達に尋ねた。
「ハッ、あとは最終チェックだけです」
「そうか」
戦闘員の言葉を聞き満足気に笑った。
「それが終わればあとは出撃させるだけだな」
「はい」
戦闘員が答えた。
「これが起き上がった時まず上海が消える」
「それから中国全土が」
戦闘員は言葉に合わせた。
「そうだ、長い歴史を誇るこの国が瞬時にして地球上から消え去るのだ。壮大な話だな」
「まことに。おそらくバダンの輝かしい歴史にこの偉業が残ることでしょう」
「私の名と共にな」
ドクトル=ゲーは追従ともとれるその言葉に頬を緩めた。
「そしてその光景はあの男にじっくりと見せてやる。そして」
「絶望の中その首を落とすのですな」
「そうだ、この斧でな」
そう言うと右手に持つ斧をゆっくりと上げた。
「待たせたな」
彼は自身の斧に語りかけた。
「だがもうすぐだ。無念を晴らす時
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