魔都の攻防
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んだ。
(では私が今まで思っていた強さは何だったのか)
彼はそう考え込んだのだ。
(長きに渡って、気の遠くなるような放浪を経て身に着けたこの力は真実の強さではないのか)
風見は役のそうした思考には気付かなかった。だが言った。
「ライダーだけがそれを持っているのではありません」
「といいますと」
役は顔を上げた。
「人が持つ強さですから」
「人が持つ強さ」
彼はそれにハッとした。そうであった。彼等は機械の身体を持っていてもその心は人間のものなのである。
だから彼等は人間なのだ。その彼等の持つ力もまた人間のものである。それは当然のことであった。
(何故今まで気付かなかったのか)
そう悔やまざるにいられなかった。
「風見さん」
彼は風見に声をかけた。
「はい」
「どうやら私はまた大切なことを教わったようです」
「よして下さいよ、そんな大袈裟な」
彼は笑って言った。
「いえ、大袈裟ではありません」
役はそれでも言った。
「また一つライダーに教えられました。ライダーは常にその心を胸に戦っているんですね」
「俺にも難しいことは言えませんが」
風見はそう断った。
「大切なのは人としての心ですよ、それを忘れないことです」
「そうなのですか」
「ええ。ライダーといっても心は人間です。それに」
「それに・・・・・・?」
「それがあるから人間なのだと思います。忘れたらそれこそバダンと同じです」
「それは人としての身体を持っていても、ですね」
「そうです、バダンの魂を売った者もいますから」
そうした者がバダンを支えている一因なのだ。もっともその中には騙され、純粋に正義を信じている者もいる。かっての結城丈二のように。
「俺はそう思うんですよ。人としての心があれば例えどのような身体であってもそれでいいと」
「・・・・・・・・・」
役はそれを聞いて沈黙した。
「俺も他のライダーも皆悩んだと思いますよ。茂なんかは自分から志願したにしろ最初はかなり悩んだと思いますし」
「そうですね」
城は親友の仇をとる為にライダーとなった。だがブラックサタンに入るまでにどれだけの覚悟と苦悩があったか。彼はそれを決して語ろうとしないが心の奥底にそれを秘めている。
「けれどそれで思い悩むのも人間だからなんです。皆そうやってその苦悩を乗り越えていくんです」
「辛いんですね」
「ええ。けれどそれに勝てないと悪には勝てない。まずは自分に打ち勝てないと」
自分に勝てなくて悪に勝てる筈もないのだ。
「厳しいですね」
「それがライダーの運命です」
風見はそう言うと前を向いた。
「この街にもバダンが潜んでいます」
「はい」
「奴等を一人残らずこの街から消す為にも俺は負けるわけにはいかないんです」
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