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仮面ライダーZX 〜十人の光の戦士達〜
隻眼の軍人
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告したのだ。
「またですか」
 報告を受けた赤十字の医者は表情を暗くさせた。中年の口髭を生やしたアラブ系の男である。
「一体何時になったら終わるのか」
 彼はふう、と溜息をついた。
「今回は死者はいませんでしたが」
「しかし傷を負う人がいるのは事実です」
 彼は筑波の慰めの言葉にも顔を晴れやかにさせなかった。
「戦争で傷つくのはいつも罪のない人達です」
「はあ」
 二人はその言葉に頷くしかなかった。それを最もよくわかっているからだ。
「貴方達には感謝しています。しかし」
 彼は顔を暗くさせたまま言う。
「戦争が完全に終結しない限りこうした悲劇は繰り返されます」
 その通りであった。だからこそ彼は顔を暗くさせているのだ。
「私は元々軍医でしたが」
「そうだったのですか」
 二人はその告白に少し驚いた。
「ええ、アメリカ海兵隊にいました」
「海兵隊ですか、それはまた」
 筑波はそれを聞いて暗い顔になった。
「洋さん、海兵隊ってあの」
 アメリカ海兵隊のことはがんがんじいも聞いていた。常時戦闘態勢にあり有事の際にはまず戦場に向かう軍である。アメリカ軍の先鋒である。それだけに損害も多い。訓練も極めて厳しい。
「ああ、あの海兵隊だ」
 筑波は答えた。この医者はそこでおそらく多くの戦争の傷を見てきたのだ。
「戦場が嫌になり軍を辞めたのですが」
 彼は俯き加減に話を続けた。
「しかしそれでも傷ついた人を放っておくことはできませんでした。しかし」
 その顔は暗さを増していくばかりである。
「やはり戦争により傷を負う人は減ることはない。こればかりは神ですら何もすることはできないのでしょうか」
「それは・・・・・・」
 筑波とがんがんじいは何も言うことができなかった。
「信じる神が違う、と言えばそれまでですが」
 医者は自嘲気味に笑ってから言った。
「それでも何とかしたい、しかし何もできない。私の力なぞは全く無力なものです」
「それは違いますよ」
 筑波はここで言った。
「貴方のような方がいなくて誰が傷ついた人達を救うのですか」
「えっ・・・・・・」
 医者はその言葉に顔を上げた。
「確かに戦争は悲惨なものです。しかし」
 筑波は言った。
「その巻き添えになる人を救う人も必要なのです。貴方のような人が」
「私の様な」
「はい」
 筑波は頷いた。
「見て下さい」
 筑波は医者の後ろを指し示した。
「あ・・・・・・」
 彼はそれを見て言葉をあげた。そこには手当てを受けている多くの子供達がいた。
「貴方のような方がいなければあの子供達はどうなるのです。彼等には貴方が必要なのですよ」
「私が、ですか」
「そうです。戦争は一刻も早く終わらせなければなりません。しかし」
 筑波は医者に
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