十三人の自分
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「はい、五大湖工業地帯を狙っていたと思われます」
「あの男らしいな。あそこを狙うとは」
五大湖工業地帯は北米で最大の工業地帯である。ドイツのルール工業地帯をも凌駕する世界最大の工業地帯の一つである。
「だがその作戦を一旦中止せよ、と伝えよ」
「ゼクロスに向かわせるのですね」
暗闇大使は問うた。
「そうだ、あの男ならゼクロスとも互角に渡り合えるからな」
「ですが今の彼は」
暗闇大使はここで口篭もった。
「どうした!?何かあるのか!?」
首領はそれに対して問うた。
「はい。今の彼はヨロイ騎士と磁石団長を失っております。万全の力は出せない怖れがあります」
「それなら心配はない」
首領は大使の危惧を一笑に付した。
「奴の力はデルザー随一だ。あの二人がいなくとも問題はない」
「そうでしょうか」
「フフフ、心配症だな、暗闇大使は」
首領はそうした暗闇大使の様子を見て笑った。
「いや、慎重と言った方がよいか。確かにそれが貴様のよいところだ」
「お褒めに預かり光栄です」
暗闇大使はその言葉に頭を垂れた。
「だがな、時として大胆にやるのも悪くはない。そう、貴様の従兄弟のようにな」
「・・・・・・わかりました」
地獄大使のことを出せば彼は怒る、それを見越した上での言葉だった。
「フフフフフ」
そして首領は含み笑いを出した。
「貴様にはこれから思う存分暴れてもらう。そしてこの世界をバダンのものとするのだ」
「ハッ」
暗闇大使は頭を垂れた。
「その為には多くのものを学べ。そしてそれを己が力にするのだ」
首領はそう言うと気配を消した。あとには暗闇大使だけが闇の中に残った。
「偉大なる首領に栄光あれ」
彼もそう言うとその場をあとにした。そして消えていった。
村雨はトロントの競馬場の中にいた。彼はギャンブルはしないがこうしたレースを見ることは好きだ。
「いい馬が揃ってるな」
彼は馬達を見て思わず呟いた。
「俺もああした馬に乗りたいもんだ」
そう話しているうちに馬達がスタートした。レースがはじまったのだ。
まずは一頭出て来た。だがすぐに別の馬が出て来る。
「ん!?面白くなってきそうだな」
レースは白熱していた。騎手達は身を屈め馬を走らせる。
コーナーを曲がった。レースはより一層白熱していく。
「どれが勝つ!?これは見ごたえがあるぞ」
一周目を終えた。そしてまた村雨の前に来た。
「あの黒い馬が特にいいな」
彼は先頭を走る黒い馬を見て言った。その時だった。
不意にその黒い馬に乗る騎手が立ち上がった。そして鞍から何かを取り出した。
「ムッ!?」
それは小型のグレネードランチャーであった。それで村雨のいる席の方に攻撃を仕掛けて来たのだ。
「何ッ!?」
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