十三人の自分
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たがここには黒人も入る。彼等は確かに奴隷でありそうした意味で虐げられていただろう。しかし奴隷は当時非常に高価なものであった。むげには扱えなかった。ましてやアンクル=トムの小屋の様に虐待なぞできるものではなかったのである。確かに奴隷であり人権を無視したものであっても。奴隷制が廃止された後は彼等も企業を持つことができたし様々な文化活動が自由であった。差別はあった、にしろだ。
そして彼等もまたアメリカ人であった。そう、今彼等は自らのことをアフリカ系アメリカ人と言う。その言葉は正しいだろう。彼等はアフリカにルーツを持つアメリカ人なのだから。アメリカにやって来た理由はどうであれ彼等もまた新大陸以外にそのルーツを持つアメリカ人なのだ。
これは複雑な意味を持つ。彼等もまたインディアン達から見れば余所者であり侵略者であったのだ。
実際にアフリカ系で構成された騎兵隊もあった。肌の黒いガンマンも大勢いた。カウボーイの三人に一人は黒人であった。そして彼等はインディアンの土地を侵略し彼等を殺戮しバッファローを撃ち殺していった。これも歴史である。差別されている者が差別をしないという道理はない。被害者が加害者になるケースも多いのだ。
そうしたことをライダー達が知らない筈がない。彼等はそのうえで人間を、そしてこの地球を愛しているのだ。
「確かに人は多くの罪を犯してきた。しかし」
そのインディアン達を救った多くの人達がいた。そしてそうした人達は今も大勢いる。人は決してその中に悪だけを持っているのではない。善も持っている。だからこそ今もこうして世界があるのだ。
それがわからぬライダー達ではない。何故なら彼等こそその善を受けて戦う戦士達なのだから。
村雨は街中を歩き回った。そして夕方になるとホテルへ帰った。そして休息をとった。
村雨がトロントにいるという情報はバダンの上層部にも伝わっていた。
「そうか、村雨良はトロントにいるか」
地下の全てが暗黒に包まれた部屋である。首領はそこで暗闇大使を前に話していた。
見れば暗黒の中にバダンのエムブレムだけが浮かんでいる。声はそこから発せられている。
「はい、どうやらまた我等のことを探っているようです」
暗闇大使は暗闇の中に立っていた。そして首領の声がするエムブレムを見上げていた。
「ふむ、そうか。あの街には何もないというのにな」
首領は馬鹿にしたような声で言った。
「そういうわけではありません。丁度今五大湖周辺で作戦行動の準備をしている者がおります」
「ほほう、誰だ!?」
首領はそれを聞いて意外そうに尋ねた。
「マシーン大元帥です」
暗闇大使は答えた。
「そうか、マシーン大元帥がか」
首領はそれを聞くと楽しそうに笑った。
「暫く見ないと思ったがそのようなところにいたのか」
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