港町の毒蛇
[5/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ことが出来なかった。朝が近くなり彼は仕方なくホテルに戻った。
「只今」
彼はそう言うとそのままベッドに入ろうとした。だがそこで異変に気付いた。
「ルミちゃん!?」
ルミの気配がしないのだ。寝息も聞こえない。
彼は驚いて灯りを点けた。ルミが眠っていたベッドはもぬけのからであった。
「まさか・・・・・・」
窓は割られている。そこから吹き込む風がカーテンを揺らしていた。
そしてルミがいたベッドには手紙がナイフで縫われていた。村雨はそれを手にとった。
『村雨良よ』
その手紙の序文にはまずそう書かれていた。
『一条ルミは預かった。貴様の居ぬ間にな』
「そうか、あの怪人達は俺を貼り付けておく為だったのか」
後悔の念で歯噛みした。だがそれはあまりにも遅かった。
『返して欲しくば今日の昼ウォーターフロントに来るがいい。ヘビ女』
「ウォーターフロントか」
シアトルの観光名所の一つである。かっては漁船の波止場であったが今は水族館やレストランで賑わっている。
「ならば行ってやる。そしてルミちゃんを救い出す」
村雨はすぐにその場をあとにした。あとには風だけが残っていた。
「こうして四人揃うのも久し振りね」
ある基地の宴の場でジンドグマの四人の幹部達が集まっていた。彼等はテーブルに座っていた。
「メガール将軍は呼ばなかったのか?」
鬼火司令は上機嫌でワインを飲み干す妖怪王女に対して尋ねた。
「一応声はかけたわよ。けれど堅物だからねえ」
「断ったのじゃな」
「そうなのよ。何であんなに頭が固いのかしら」
妖怪王女は幽霊博士の言葉に答えた。
「あ奴の糞真面目さはドグマにいた頃から変わらんのう。困ったことじゃ」
「鬼火司令が不真面目過ぎるのではないかしら」
魔女参謀はサラダを口にしながら言った。
「おいおい、わしはいつも真面目だぞ」
「怒って電話ボックスを壊す程ね」
「妖怪王女、その話はいい加減止めてくれ」
「うふふ」
口喧嘩をしながらも雰囲気はいい。彼等はどうも他の幹部達のように緊張した関係にはない。
「ドグマの頃からね。メガール将軍のああした性格は」
魔女参謀は呟くようにして言った。
「仕方ないがのう。あの者は我等と境遇が異なり過ぎる」
幽霊博士はもそもそと魚を食べながら言った。彼等はテラーマクロにスカウトされてドグマに入った。そして自ら進んで改造手術を受けた。
だがメガール将軍は違っていた。彼は改造手術の失敗で醜い姿になってしまったことに絶望し自殺しようとしていたところをテラーマクロに拾われたのだ。
「何度も言っておるのだが。そのようなことは気にするなと」
鬼火司令は顔を顰めさせた。
「けれどそれが忘れられないのでしょうね。元々真面目だから。私なんかと違って」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ