港町の毒蛇
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妹のようであった。村雨良と一条ルミである。
「よくテレビでマリナーズとかいうチームのことはやっていたな。俺は大リーグにはあまり興味がないけれど」
「イチローがいるからね」
「イチロー!?オリックスにいたんじゃなかったのか」
「何言ってるのよ、大リーグに行ったじゃない」
「そうだったのか。どうもそうしたことには弱いなあ」
村雨は困った顔をして言った。
「それは仕方ありませんよ」
ルミはそんな彼を慰めるように言った。
「良さんは色々ありましたから」
「・・・・・・有り難う」
気遣うその言葉が有り難かった。村雨はルミの言葉に癒された。
「じゃあ試合見に行きますか?」
「今やってるの?」
「ええ。丁度イチローが出ますよ」
「そうか。じゃあ一度見てみるか」
二人はこうして球場に向かった。
丁度試合がはじまった時だった。イチローはライトにいた。
「ポジションは日本にいた頃と変わらないな」
「イチローといえばライトですからね」
ルミはニコニコとしながら言った。
丁度打球が飛んできた。かなり深い打球だったがイチローはそれを何なくキャッチした。
「守備も相変わらずだな。足も反応もいい」
「肩も凄いですよ」
そんな話をしているうちにその回は終わった。今度はマリナーズの攻撃である。
イチローは難しい変化球を流し打ちした。そして盗塁を決めた。
「バッティングはさらに進歩しているな。あの時でかなりのものだったが」
村雨はオリックス時代の彼のことを思い出しながら呟いた。
「正直ここまでの選手は見たことがない。一体何処まで進化していくのか」
試合はマリナーズの勝利に終わった。イチローは攻守にわたり活躍した。
「面白かったですね」
「ああ、イチローも久し振りに見たがやはり凄いな」
彼は満足した顔でそう言った。
「やはり彼は凄いな。わざわざ見たかいがあった」
「次は何処に行きます?」
「そうだなあ」
彼は考えた。
「とりあえずは腹ごしらえをしよう。もう夕方だしね」
「はい」
二人はレストランに入った。そしてステーキを食べた。
それから二人はホテルに入った。ルミはベッドに入るとすぐに眠りについた。
「よし、気持ちよく眠っているな」
村雨はその寝顔を覗き込んで確かめた。見ればあどけなく可愛らしい寝顔である。
「これでよし」
彼は彼女から顔を離すと窓の外を見た。もうすっかり陽は落ち夜となっている。
村雨は部屋を出た。そして夜のシアトルに向かった。
シアトルはアジア系の多い街である。アジア太平洋地域への玄関口の一つであるからそれは当然であった。ボーイング社の最初の技術責任者も中国系であった。
元々アメリカはアジアを目指していた。彼等のモンロー主義も門戸開放宣言もそ
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