宮殿の人狼
[3/18]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
と死闘を繰り返していたのだ。
「その後も何度か来たな。いつも戦ってばかりだったが」
彼はそこで腕を組んだ。
「たまには戦い以外で来たいものだ」
「それはバダンを倒してから言いましょ」
「うん。ルリ子さんはしっかりしているな」
「猛さんが浮世離れし過ぎているのよ」
ルリ子はそんな本郷に対し微笑んだ。そして二人はそのままセーヌ河の方へ向かった。
セーヌ河はパリを流れる河である。古くからこの街に美しい景観だけでなく水運により多くのものをもたらしてきた。フランス革命の原因は寒波によりこの河が凍結し穀物が運べなくなったことであった。
今二人はその石橋の上を歩いていた。その両端には枯れた木々が立ち並んでいる。
「詩的な風景ね」
「そうかな」
本郷はルリ子の言葉に首をかしげた。
「もうっ、猛さんってこうしたことには鈍感なのね」
「俺はどちらかというと日本の景色の方が好きなんだけれど」
「好みの問題じゃあしょうがないかな」
「すまない、こればかりはどうしようもない」
本郷はルリ子に口を尖らされながら橋の上を歩いていた。そこへ誰かが来た。
「本郷猛と緑川ルリ子だな」
それは黒服に身を包み帽子を目深に被った男だった。
「そうですが」
本郷はその男の怪しげな様子に警戒しつつ答えた。
「そうか。ならば問題ない」
男はくぐもった声でそう言った。
「死ね」
そう言うと服を脱いだ。そして何かを投げて来た。
「ムッ!」
本郷はそれをジャンプでかわした。橋の手摺りの上に着地した。
「バダンか!」
「いかにも」
男の正体は怪人であった。ショッカーのオーロラ怪人カメストーンである。
「貴様の命、貰いに来た」
「何をっ!」
「そして来たのは俺だけではない」
「何っ!?」
その時だった。橋の下から何かが跳んで来た。
「ウォッ!」
それは何か黒いものであった。本郷の首を掴むとそのまま河の中に引き摺り込んだ。
「猛さんっ!」
ルリ子は驚いて本郷を助けようとする。だがそれは間に合わず本郷はそのまま河の中へ消えていった。
「エエエエエ」
カメストーンは無気味な笑い声を出しながらルリ子に近付いて来る。
「無駄だ、本郷猛は助からぬ」
彼は笑い声に劣らぬ無気味な声でルリ子に対して言った。
「あの者の髪の毛から逃れた者はおらん」
河の中から一体の怪人が飛び出てきた。
「ヒッ・・・・・・」
怪人のその醜悪な姿を見てルリ子は思わず引いた。ネオショッカーの鬼火怪人クチユウレイであった。
「クァーーーーー」
怪人は無気味な叫び声を出しながらルリ子に近寄って来る。彼女は前後から怪人に取り囲まれた。
「緑川ルリ子よ」
そこで後ろから声がした。
「こうして会うのははじめてかな」
左
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ