失われた地の翼人
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り記憶力なくて」
史郎はそれに対してバツが悪そうな顔をした。
「野崎です。野崎ユミ。洋さんの知り合いなの」
その少女はニコリと笑って答えた。
黒い髪を肩のところで切り揃えている。赤いセーターに黄色いジーンズを身に着けているやや小柄な少女である。
彼女は志度博士のハングライダークラブの一員であった。その関係でネオショッカーと戦うことになった。負傷しながらも復帰して彼等と戦った闘志の持ち主である。
「えっと、洋君だよね。今何処にいるか知ってる?」
史郎はルミに尋ねた。
「今南米だそうですよ。何でもアマゾンからギアナ高地に入ったとか」
「アマゾンからギアナ高地か。また凄いところを回ってるなあ」
史郎はそれを聞いて感慨深そうに言った。
「史郎さん、旅行に行ってるんじゃないでよ」
ルミが再び咎めた。
「そうですよ、洋さんは戦いに行ってるんですから」
ユミもそれに続いた。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ二人共、そんなに言わなくてもいいじゃないか」
史郎は女の子二人に責められ狼狽した声をあげた。
「俺だってそれ位わかってるよ。ただえらく凄い場所で戦ってるんだなあ、って」
「そんなに凄い場所なんですか?」
二人はその言葉に表情をあらためて尋ねた。
「ああ。アマゾンは知ってるだろう」
「ええ」
アマゾンは通称『緑の地獄』と呼ばれる。鬱蒼と茂った密林の中には猛獣や毒蛇が身を潜めている。川の中には鰐やピラニアが棲む。中には人の血を吸う魚までいる。
「ギアナ高地も凄いところなんだよな」
「どんなところなんですか!?」
ユミはさらに尋ねた。
「あそこは人類最後の秘境とも呼ばれるんだ。何しろ標高二千メートルもあるテーブルマウンテンが無数にあってね。あ、二人共テーブルマウンテンは知ってるよね」
「はい」
二人は答えた。テーブルマウンテンとは頂上が平らになり台地になっている山のことである。
「そしてその間が断崖絶壁になっているんだよ。それも密林の中にね」
「凄いですね」
「それだけじゃないよ。風も空気も複雑に動くし。アマゾンに勝るとも劣らない危険な場所なんだ」
「洋さん大丈夫かしら」
ユミはそれを聞いて表情を暗くさせた。
「大丈夫だと思うよ、根拠はないけれど」
史郎はそんな彼女に対し笑顔で答えた。
「どうしてそう言えるんですか?」
ルミが尋ねた。
「いやね、ライダーって今まで信じられない位の死闘を潜ってきているじゃない。今更その程度の場所で戦ってもね」
彼は微笑を浮かべていた。
「ライダーを信じようよ。彼等は何時だって絶体絶命の状況を乗り越えて勝ってきたじゃないか。だから今回も絶対に勝つよ、心配しなくていい」
「優しいんですね、史郎さんって」
ルミはそんな彼に微笑んだ。
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