草原の赤き花
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き込みながら言った。そして二人は眠りに入った。
翌日二人は馬に乗り東に向かった。陽が次第に高くなっていく。
「それにしても雲ひとつない空ですね」
その高くなっていく陽を見ながら佐久間が言った。
「ええ。けれどこうした日が続くのはあまり多くないそうですよ」
神は言った。
「そうなんですか?」
「ええ。モンゴルは冬がものすごく長いですしね。一年の大半は雪に覆われるんです」
「そうなんですか」
「モンゴルの冬は凄いらしいですよ。寒さで牛の頭が割れるくらいだそうですから」
「そういえばここのすぐ北はシベリアでしたね」
「はい」
「だとしたら寒いのも当然ですね。それにここは高原にあるんだし」
「そうです。そして内陸地ですからね。あまり住むのにいい場所ではないでしょう」
「そんなところにモンゴルの人達はずっと生きているんですか。大変ですね」
「ところがモンゴルの人達はここが一番素晴らしいと言いますよ。畑を耕すよりこの草原で羊をと一緒に生きているほうがずっといいって言います」
「それだけこの草原に愛着があるのですかね」
「そりゃそうでしょう。あの人達はこの草原で生まれ育ち、そして草原に帰るのですから」
それはモンゴル人の宿命であった。かって世界を席巻したモンゴル帝国の偉大なる創始者チンギス=ハーンもまたその一生の最後をこの草原で終えている。
「俺達も日本って国に愛着心があるでしょう?」
「それは当然です」
佐久間は答えた。彼は日本から長い間離れているがそれでも祖国を愛している。
「それと一緒です。モンゴルの人達もこの草原が好きなんです」
「そう言われるとよくわかりますね」
彼は外国にいてはじめて自分の国の素晴らしさがわかった。愛国心を持たぬ者は馬鹿にされるということもわかった。彼はそれを嫌という程よくわかっていた。だから悪行の限りを尽くすテロ国家を擁護し祖国を貶めるような輩はバダンの次に嫌いであった。
しかし今はそれを心の中に留めておいた。今はバダンを倒すことだけを考えることにした。
昼食をとった。そしてさらに進んだ。
「何か感じましたか?」
佐久間は神に対し尋ねた。
「はい、来ますよ」
神の顔は真剣なものであった。そこへ砲弾が飛んで来た。
「危ないっ!」
彼等は馬を走らせる。つい先程までいた場所を爆風が襲う。そしてその爆風は彼等を追う様に連なってくる。
「佐久間さん、馬達を安全な場所に!」
神は馬から飛び降りた。そして佐久間に馬を預けた。
「わかりました!」
佐久間はそれに答えた。そして彼は自分の乗る馬と神が乗っていた馬を連れて何処かへ去った。
「来い、バダン!」
彼は草原の上に身構えて叫んだ。
「俺はここだ、逃げも隠れもしない、来るなら来い!」
その彼の周囲を
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