2話 一閃
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
戦闘が開始してから十数分、戦局はやや苦戦状況にあった。
第一の問題はケルベロス特有の特徴と言ってもいい物だった。頭が3つあると言う事は死角がほぼ無いと言うことなのだ。このゲームに視界の制限があるのならば視点が3つもあるケルベロスに死角が無いと言うことになる。
次にあの獰猛さからなかなかプレイヤー達を寄せ付けなかった。包囲したところでそれが解決することは無く、ただ体力を消費するだけだった。
三つ目に、スピードが高い事が問題だった。あれはまさしくハンターだ。包囲する物のすぐにプレイヤー達を振り払い、次々にプレイヤーを襲っている。
そして一番厄介なのがヒーリング能力だ。正確には後方にある壺だ。ダメージを受けてはプレイヤーをなぎ倒して後方に下がって壺にな言った何かをむさぼり食っている。壺を破壊しようとする物なら逆に潰される。
プレイヤー達は撤退を強いられ始めていた。
幸いなことに死者こそは出ていないが、アイテム消費量は徐々に増えて行っている。
「退け! ここは一旦退くんだ!」
軍の一人がそう声を上げた。それを聞いた軍の連中は転移アイテムを使ってその場から姿を消した。
確かに判断は誤ってはいない。しっかりと対策を考えれば勝てない相手ではないのだ。
ギルドに所属していた連中も続々と離脱を開始し始めた。
「……」
だが、俺が離脱することは無かった。
「おい! お前も一旦退け!」
バンダナを付けた紅髪の男がそう声を掛けてきた。男は戦国風の姿をしており、腰には刀が帯刀されていた。
「……逃げたかったら逃げろ……負けたつもりで居ればいい」
「そんなこと言ってる場合じゃねーだろ!!」
格好付け、そう思える言いぐさだろう。だが、一度挑んだものに退くことは許されない。どちらかが死ぬまで戦うのが道理なんだ。
「おい、クライン!」
ギルドメンバーだろうか、HPバーの所に同じメークが表示された奴がそう声を上げた。この場所に残っているのは俺と戦国風の姿をしたギルドの連中のみだった。
「ああ、分かってる! お前も一旦退け、いいな」
バンダナの男はそう言って転移アイテムでその場を後にした。
この場所に残ったのは俺一人、到底太刀打ちできる相手では無いと言うことはよく知っている。だが、不思議と平然と居られた。
俺は手にした打刀をカチンッと鞘に納め、居合の体勢を取った。
ソッと手柄に手を添え、体勢を低くして構えた。
「グオオオオオッ!!」
猛スピードで襲いかかってくるケルベロス。だが、俺は動じること無く構えていた。
その時、俺の脳裏に一つのモーションが浮かんだ。
深く踏み込み、すれ違い様に切る居合切り。
第一の抜刀術、ソードスキル「一閃」だ。
「……斬る」
襲い来るケルベロス。だが俺には恐怖が無かった。
地面を蹴り、駆けだした。
そして
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ