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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十八話 新城直衛の晩餐
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樋高が新城を見て云うと羽鳥がそれに便乗して笑いながら云った。
「前も言ったが、やはり貴様は面倒に好かれる質なのだな。」

「俺は嫌いだよ、本当に。
何時だって面倒事から寄ってくる」
 ――寄られる様な態度なのだと言われているのも事実であるが。
と新城も笑う。
「そうか?
普段の所作を見ているとそうは思えん。
むしろ好んでいるようにだって見えるぞ?」
槇が笑いながら混ぜ返す。

「そうだな、俺もそう思っていた。
貴様は人を選ぶが面倒事も選んでいるのだとな」
 古賀まで真面目な表情を貼り付けて頷き、樋高までもが笑い出した。
彼らもまた、退役将校であり、この戦とは無関係でいられない。だからこそ、一寸を惜しむかの如く、過去を肴に杯を交わしているのだろう。
いち早く太平の世に別れを告げた新城もその名残に心地よく浸り、別れを告げるかのように杯を乾かした――明け方まで何杯も乾かし続けて義姉に叱られたのは別の話である。




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