第八十七話 トリステインの選択
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ザール。座ってよい」
「御意」
ラザールが着席すると、会議室は重苦しい静寂に包まれた。
各閣僚の顔色は悪く、夢から覚めたような顔の者がチラホラ見かれられた。
マクシミリアンは、この光景を見て内心ほくそ笑んだ。まさに『計画通り』だった。
(よしよし、これで良い)
何故、マクシミリアンがこの様な事をしたには理由がある。
それはマクシミリアンが、新世界から戻ってきて、王宮を包む気の抜けた空気に気づいたからだった。
未知の世界で常に気を張り警戒しながら暮らした経験からか、トリステインを包む浮ついた空気に、マクシミリアンは心配になって独自に分析してみた。
分析の結果、好景気の影響の為か、それとも何をやっても大成功な影響の為か、トリステイン全体が
緩みきった気配が王宮を支配していた。古い言葉で例えればイケイケ状態と言ってよい雰囲気だった。
数年続く好景気に、警戒心を無くした一部の閣僚から今回のゲルマニア皇帝の死に乗じて、ゲルマニア領に侵攻しようという空気を、マクシミリアンは会議室に入った瞬間感じ取った。
そこでマクシミリアンは、緩んだ空気を払拭する為に、ゲルマニアへの侵攻がいかに無謀かラザールの口から説明させ綱紀粛正を図った。
「次、空軍卿のトランプ提督、現在の空軍の艦船の状況を報告して下さい」
「ははっ」
ミランの催促にトランプ提督が立ち上がり、玉座のマクシミリアンに一礼した。
空軍卿となったトランプ提督は空軍の正装で出席していて、顎から胸の辺りまで白髪で真っ白になった長い髭を垂らし、持っていた資料を読み上げた。
「今現在、空軍は既存の艦船に水蒸気機関を取り付け作業を急ピッチで進めておりますが、肝心の水蒸気機関を作成できる技術者が、ラザール殿を含めたほんの一握りしか居ない為、改修作業は遅々として進んでおりません」
「ゲルマニアと事を構えると仮定して、トリステイン空軍はどの程度の艦船を投入できる?」
マクシミリアンがトランプ提督に聞いた。
「改修を終えた汽走戦列艦が8隻、それ以下の汽走小型艦艇20隻が投入できます」
「改装が完了した艦艇はそれだけか」
「御意。他にも改装待ちの艦船は大小あわせて30隻以上あります」
「水蒸気機関の生産数は少ないからな。ありがとうトランプ提督」
「ははっ」
トランプ提督は一礼すると着席した。
「陛下。他に何かございますか?」
ミランがマクシミリアンに聞くと、マクシミリアンは手を挙げて玉座から立ち上がり語り始めた。
「さて、現状の戦力ではゲルマニアへの侵攻は難しいが、等のゲルマニアがトリステインに対しどう動くか僕には分からない。そこで、ゲルマニアがトリステイン側の国境を越え
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