本編前
第六話
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は、怖かったね。私も教師暦二桁になろうかって年で、いろんな親御さんに会ってきたけど、あんな目の人は初めてだ。どっかの社長さんよりも鋭い目をしてたよ。かといって、ヤのつく職業みたいな人にも見えなかったけどな」
「はあ、それはご愁傷様です」
しかし、父親ともなれば娘は目に入れても痛くないほどに可愛がっているはずだ。しかも、仮にもこういうことに慣れていそうな先生を本気で怖がらせるんだから、溺愛ぶりが目に浮かぶようだ。そんな子が不登校になるなんて先生も本当にご愁傷様としか言いようがない。
「それで、お前に頼みたい用件なんだが」
ああ、もうそれは言われなくても分かった。ここまで話して、僕が予想した以外の答えだったら、先生はただ愚痴りたかっただけってことになるから。この先生の性格からして、それはない。
「隣のクラスを探って来いって言うんでしょう」
確かに先生だけでは辛いかもしれない。時々、いじめが起き、最悪の事態になった後、担任の先生のインタビューとかで、教師は事実を知らなかった、ということがある。高校生ぐらいまでのときは、それは嘘だろうと思っていた。だが、意外とそれは事実である場合が多々であることが調べてみて分かる。
いじめの巧妙化。隠れたいじめというのは実に見つけにくい。しかも、先生も一日中、生徒を監視しているわけではない。つまり、本当に知らなかった可能性が高いのだ。知っているのは、いじめている本人といじめられた被害者、そして、近しい人間だけ。
そして、事情を聞けるのはおそらく近しい人間だけだろう。いじめた本人もいじめられた被害者も自分からいじめられています、なんて口に出すことはないだろうから。
だから、僕がやることは近しい人間の口を割ることだ。
「ああ、そうだ。よくわかっているじゃないか。まあ、隣のクラスの半分は元クラスメイトだから探りやすいだろう」
「そうなんですか?」
確かに半分ぐらいは面子が変わったけど。残りの半分は全部隣のクラスになったのだろうか。まさか、そんな偶然あるはずがない。いや、でもよくよく考えてみれば、クラスの半分も同じクラスになるのがおかしいのか。五クラスあるんだから、同じクラスになる確率は五分の一。つまり、同じクラスの人間は平均で六人ぐらいじゃないとおかしい。
だけど、僕のクラスはアリサちゃんやすずかちゃんといった十五人ぐらいは前と人間が変わらない。しかも、残り十五人は全員隣のクラスだという。そんな偶然があるはずがない。つまり、このクラス替えは意図的なものなのか?
「おや、お前は知らなかったのか? 月村やバニングスと仲がいいから知っていると思っていたが」
だが、僕の混乱を余所に先生は知らないことが不思議というような表情を浮かべた。
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