本編前
第五話
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るだけよりいいか。
半ば、高町さんの言い分を聞き流しながら、僕は治療道具を探す。
僕には僕が出来ることしか出来ない。
高町さんが僕を何でも出来るなんて思えるのは、まだ学年が低いからだろう。きっと、これから大きくなるにつれて僕にだって出来ないことは増えてくる。
僕の存在というのは、すごく反則的な存在だ。身分的には子供なのに頭脳は大学生。そんな僕が小学生相手になんでも出来るのは当たり前なのだ。
「わたしも蔵元くんみたいになれたらいいのに」
どこか羨望するような目で僕を見てくる。
正直、そんな目で見られたことは人生で一度もないので少し恥ずかしくなる。僕は、その目から逃げるように出来るだけ高町さんの目を見ないようにかがんで、膝の手当てを始める。
えっと、ラップを張って……。
「僕みたいなんてやめたほうがいいよ。可愛くなくなるから」
たぶん、教師たちに一番可愛くないと思われているのは僕だろう。担任の先生も暗にそういっていた。
手がかからない子供。確かに口にすればいいものかもしれない。しかしながら、手のかからない子供ほど可愛くないものはないのだ。
なぜ? といわれても仕方ない。それが親の心というものだ。煩わしい、面倒だ、と思いながらも子供には愛情を持っている。それは、世話を焼き、子供を育てているという実感があるからだろう。
それに対して、僕の場合は、どうか。僕の場合は、最初から育っているようなもんだ。教えられることなくトイレにだって行けたし、着替えも出来た、一人で寝ることも出来た。手がかからない子供だろう。おそらく、両親は、僕を育てたという実感は少ないのではないか、と思う。この年齢になって弟か妹が出来たのがいい例だ。もしかしたら、僕が穿ちすぎなのかもしれないが。
「それに、誰かになりたいなんて思うもんじゃないよ。ほら、昔の人だって言ってるよ。『みんな違って、みんないい』。多分、高町さんは僕が何でも出来るところをいいところと思ってるんだろうけど、僕みたいになると高町さんのいいところが消えちゃうよ。だから、そんなこと思わないほうがいいよ」
手当ての最後に包帯を一巻きして、膝の治療は終わり。肘のほうも手早く終わらせた。
治療が終わるのに必要だった時間は約五分。まったく、何度も同じようなことやってたから手馴れちゃったよ。
「さて、これで終わり。僕は道具を片付けてすぐ行くから、高町さんは先に行っててよ。僕は後で追いつくから」
僕が話してから俯いて何も話さなかった高町さんだったが、僕の言葉は聞こえていたのか、ゆっくりと立ち上がって保健室の出口へと歩いていった。
僕は、勝手に出してしまったラップ、包帯、テープを片付けて、保健室の利用履歴を書か
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