本編前
第五話
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員に付き添いを頼んだのだが、あからさまに不満げな顔をしていた。それは、男女いる保健委員共にだ。確かに体育の時間の途中に抜けろと言われたら嫌かもしれない。それが自分の仕事だとしても。だからといって、そんな不満げな顔をしなくても、とも思うが。
結局、この場合、付き添いを頼んでもしっかり手当てしないだろう、という判断から僕が付き添った。
そして、今現在、こうして肘と膝の擦りむいた箇所を水で流している。
「痛い?」
「ううん、大丈夫だよ」
水で流すとき、顔をしかめていたにも関わらず笑ってそういう高町さん。
高町さん。本名は、高町なのは、だっただろうか。
入学式の日、自己紹介の後にクッキーを貰った記憶しかない。
彼女のクラス内での立場は、誰にも深く立ち入らず、かといって離れずだ。
ある意味で、僕やすずかちゃんと似ている。ただ、すずかちゃんがどこのコミュニティーにも所属しない、という立場を取っているのに対して―――何の因果か、アリサちゃんと親友をやっているが―――僕のようにどこのコミュニティーにも顔を出しているというところから考えるに、どちらかというと僕よりのスタンスなのだろう。
高町さんがどうしてそんなスタンスを取っているか分からない。だが、個人にはそれぞれ事情があるだろう。
見たところ、孤立している感じもない。それに問題行動だって起こさない。彼女はクラスの中では優等生に分類されるだろう。だから、僕と高町さんはあまり交わらなかった。
「はい、後は中で手当てだね」
水で傷口を流してしまえば、後は簡単だ。
僕と高町さんは、傷口の周りを保健室においてある清潔なタオルで拭って、保健室の中に戻る。
「あ、そこに座ってて」
血は止まっているようだが、怪我をしている高町さんに保健室に備え付けてある丸椅子に座るように指示して、僕は治療道具を探す。
僕が知っているこの学校の養護教諭はもうすぐ定年じゃないか、というおばあちゃん先生なのだが、時々消える。
まったく、少なくとも養護教諭は、放課後までずっと保健室にいるべきだと思う。もしかしたら、職員室にいるのかもしれないが、呼びに行くよりも僕が手当てしたほうが早いので、こうして高町さんの手当てをしているのだ。
「蔵元くんは、すごいね」
「え? なにが」
えっと、確かここら辺に……あ、あった、ラップはここか。後は、テープと……。
「勉強も出来て、運動もできて、なんだって知ってて、誰にだって優しくて、傷の手当もできて、なんでもできるから」
「なんでもは出来ないよ。僕は僕の出来ることしか出来ない」
あとは、大げさになるかもしれないけど、包帯も必要かな? でも、ラップが見えてい
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