本編前
第五話
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の先生たちが固まっている場所の中で机に座って仕事をしているのは僕のクラスの先生だけだった。
しかし、それが分かったところでどうしようもない。
先生の業務というものを僕は知らないので、他の先生たちが何をやっているかなんて分かるはずもない。
「いえ、分かりません」
「他の先生は今頃、自分の担任の教室でお仕事中さ」
はて、おかしな話である。
一年生の担任は、必ず自分が受け持った教室で仕事をしなければならない、と明文化されているなら目の前の担任も自分の教室で仕事をしなければならないはずだ。
だが、こうして、今、僕の目の前で先生は自分の仕事をしている。つまり、強制ではないわけだ。いくら僕の担任が他の先生に比べてちゃらけていたとしても、さすがに職場のルールを破るようなことはしないだろうから。
「おやおや、さすがに特Aクラスの特待生でも分からなかったかい?」
「僕はただの児童ですよ。先生の事情が分かるわけありません」
「いやいや、自分の立場を理解しているお前を一介の小学生に分類できるかといわれれば、甚だ疑問だがね」
まるで詐欺師を見るような目。
明らかに教師が生徒に向けてはいけないだろう、とは思うが、その視線は僕の特性を考えると的を射ている。詐欺師のようなというか、詐欺師そのものと言っても過言じゃないからだ。
「まあ、いい。さて、他の先生たちが自分たちの教室に行ってるのはだな、はっきり言うと心配だからだ」
―――ああ、なるほど。
僕は先生のその言葉を聞いて大体把握した。なぜなら、それは僕が昼休みに教室にいながらいつも感じていることだからである。
「お前たちの学年は一年生だ。保育園、幼稚園から小学校というまったく別の環境に放り込まれた子供たち。知ってるか? 一年生の担任をする上で一番大変なことは、きちんと授業の間、席に座らせることなんだ。それに、相手は子供だからな。自制心がない。我慢も知らない。小さな喧嘩なんて日常茶飯事だ。それでいながら、少しでも怪我しようものなら、保護者が飛んできて文句を言う。学校が始まったときから放課後まで気の休まるときが一切ないのが担任ってやつさ。特に今の時期なんて目が離せない」
その苦労は分かる。なぜなら、僕が現在進行形で感じている苦労だからだ。しかも、僕なら、彼らの様子だけを見ればいいのだが、先生たちはそれに加えて自分たちの『教師』としての仕事もあるのだ。下手をすると、そこらへんのブラック企業よりもブラックかもしれない。彼らには、本当にご愁傷様、としかいえない。
「まあ、その点、私はかなり恵まれているけどな。お前がいるから」
僕を見て先生が笑う。確かに、僕がいれば、先生は職員室で自分の仕事をしていも何も問題はない
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