本編前
第四話
[7/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ーミングセンスはまったくない。
「予想通り手堅くきたわね」
「これ以外に呼び方はないような気がしますが」
「ほら、そこは君の独創力で」
「そこには期待しないでください」
「ちぇ〜」
忍さんの期待をすっぱりと斬り捨てて僕は、注がれた紅茶に口をつける。
先ほど、ちょこっと考えただけで僕は自分のネーミングセンスに見切りをつけたのだ。
しかし、あれだ。少し考えると、僕だけ忍さんと名前で呼ぶのは不公平ではないだろうか。
「交換とは言ってはなんですが、忍さんも僕のことを『ショウちゃん』か『ショウくん』とでも呼んでください。友人は皆、そのどちらかで呼んでいますので」
翔太というのは意外といいにくいらしい。それよりも簡単に『ショウちゃん』あるいは『ショウくん』、または『ショウ』というのが僕の一般的な呼ばれ方だ。この呼ばれ方は保育園時代からの呼び名だ。新しくクラスメイトになった友人もみんなこの呼び方で僕を呼ぶ。
それに、サッカーなどのスポーツのときは『ショウ』と短いほうが呼ばれやすいしね。
「へ〜、なら、そうやって呼びましょう。……って、すずかとアリサちゃんは、蔵元くんって呼んでなかった?」
「うん、そうだね」
「そういえば、そうね」
それもそうだ。二人とは、友達同士のような会話をした記憶がない。僕が話すことが多いのは我クラスのまだ保育園、幼稚園気分が抜けない連中だ。必然的に彼らとは一歩階段を上っているバニングスさんと月村さんと会話する必要がない。僕が手をかけるようなことがないからだ。せいぜい、最初のときぐらいだろう。
あのこと以来、僕と二人が会話したことなんて実は両手で数えられるぐらいしかないんじゃないだろうか。
「なら、この機会に呼んじゃいなさいよ」
「まあ、僕としては吝かではありませんが」
お茶会にまで呼ばれているのだ。ここで友人ではないと否定できる要素はどこにもない。
それに、最近は僕に注意されたり、諭されたりすることで少しずつ彼らにも自覚が出てきたのか、僕が出て行ってなんとかしなければならない回数は気持ち減っているように思える。
なにより、僕にだって癒しが欲しいときがあるのだ。気苦労せずに会話できる時間のような癒しが。その癒しとして、彼女たちは合格点以上だと思える。
「いいわよ。呼んであげようじゃない。ショウ」
「ん、わたしも。ショウくん」
「では、僕は、すずかちゃんとアリサちゃんで」
僕は基本的に友人の女の子は『ちゃん』付けで呼んでいる。
自分から相手への呼び名というのはその人への距離感を示している。
『様』などの敬称をつけているときは、明らかに目上の人への呼び方。苗字だけや『さん』付けの場合は
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ