本編前
第四話
[6/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ト、シナリオ、内容を覚えてなければならないのだが、そこまで僕の記憶力はよくないし、かといってこの世界で『とらいあんぐるハート3』をプレイすることも叶わない。
つまり、『とらいあんぐるハート3』の世界に『月村すずか』が存在しないと証明することは無理な話なのだ。
しかしながら、僕としては『とらいあんぐるハート3』のゲーム内で『月村すずか』が存在しようが、しまいが、どっちでもいい話である。所詮、今ではプレイすることも叶わないゲームの話。今の僕になんら影響を与えることはない。今の現実では、こうして目の前にいることが証明されている。つまり、月村すずかは存在する。証明終了である。
ん? でも、ちょっと待てよ。
仮に、月村忍がこの現実でも吸血鬼と仮定すると僕とクラスメイトの月村すずかも吸血鬼なのか?
彼女たちが姉妹とするなら、無理のない話である。むしろ、片方が吸血鬼で、もう片方が吸血鬼でないと考えるほうが変な話である。
といっても、確認する気のない僕にとってはどうでもいい仮定であるが。
「あら〜、今度はすずか? 目移りする男は嫌われるわよ」
「だから、違いますって」
三度目の正直。月村さんのお姉さんがどれだけ誰かをからかうことに飢えているのか分からないが、ちょっとしつこすぎやしないだろうか。ついでにもう一人のからかわれた張本人は月村さんのお姉さんが言っている意味が分からず小首をかしげていた。
「さて、それで、私に対する呼び方は決まったかしら?」
「……え?」
「え? って、今までそれを考えていたんじゃないの?」
いえ、あなたが吸血鬼かどうかについて悩んでました、なんていえるはずがない。なるほど、さっきから考え込んでいる僕に注目しながらも話を振ってこず、月村さんとバニングスさんとばかり話していたのは、僕が月村さんのお姉さんの呼び名について考えていると思われていたのか。
ここで、いいえ、と否定するのは簡単だ。だが、その代わり、何を考えていたのか? と問われる可能性が高い。ここでもまた嘘を重ねることは簡単だが、嘘というのは重ねれば重ねるほどに綻びが出てくるものだ。ならば、話をあわせて誤魔化してしまったほうがいい。
「ああ、そうですよ。そうでした。月村さんのお姉さんの呼び方でしたね」
「そうよ。それで、決まった?」
「ええ、お言葉に甘えて、忍さんと呼ばせてもらいます」
よもや呼び捨てにするわけにはいかず、かといって、子供がするように『忍』という名前から変なあだ名を考えるわけにもいかない。
子供というのは変なあだ名を考えることについては天才的である。
しかし、この場合、考えられるとしたら、どんなあだ名だろうか。『しのちゃん』とか? ダメだな。僕にネ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ