本編前
第四話
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ろ、こんな好奇心から来る疑問で、自分の命を危険に晒したくない。好奇心は猫をも殺すのである。
「紅茶のお代わりはいかがですか?」
「え? はい、いただきます」
僕が月村さんのお姉さんに対しての対応を考え込んでいる最中に思考に割り込むようにしてメイドさんが、僕の空になったカップに気づいたのか、紅茶のお代わりを勧めてきた。僕に断る理由などどこにもなく、承諾する。
ああ、そういえば、もしも、あのゲームの通りだと仮定すると、この人は人形なんだよな。
月村忍というヒロインから連鎖的に思い出した出来事。それは、彼女に仕える『人形メイド』のことである。彼女の名前は確かここに来て一度聞いた記憶がある。『ノエル』といっただろうか。物語で一番印象に残っているのは『ロケットパンチ』だけなのがなんとも物悲しい。
「どうかされましたか?」
「あら〜、蔵元くん、ノエルに見惚れちゃったりしたぁ? ダメよ。ノエルは家の大切なメイドなんだから。でも、蔵元くんは、一年生なのにませてるわね〜」
僕が月村さんのお姉さんと同じようにメイドさんに視線を固定したまま、思考にはまってしまったところを二人に見られてしまったらしい。ノエルさんは、ただメイドとしての職務を果たすために。月村さんのお姉さんは、中年親父のようにニマニマと笑いながら尋ねてきた。
「いえ、別になんでもありません」
そう、極めて冷静に返しながら僕は、ノエルさんが入れてくれた紅茶を一口、口に入れる。
向こうで「ちぇ〜、面白くない」なんて月村さんのお姉さんが言っているが、残念なことにそんなことを言われて、あたふたするような思春期は、向こうの世界では、過ぎてしまったし、こちらの世界ではまだまだ先の話だ。
そして、そろそろこの苦味にも慣れてきた二口目を口にしながら、続きを思い出す。
そうそう、確か、ゲームでは、月村さんのお姉さんと人形メイドのノエルさんの二人暮らしで―――
二人暮らし?
その単語に思わず、僕の視線は今度は月村さんに固定された。
―――月村すずか。
月村忍さんをお姉さんと呼ぶからには姉妹なのだろう。姉と呼ぶ関係なら従姉妹か? とも考えたが、これだけ顔立ちや髪の色が似ていながら姉妹でないとは考えにくい。
ということは、僕のゲームの知識が間違っているのか、とも考えたが、うっすらと欠片しか残らないゲームの記憶を掘り起こしても月村すずかという名前を見つけられない。
さて、証明問題を考える際に『何か』の存在することを証明することは簡単だ。一つでもその存在を示せばいいのだから。だが、いないことを示すのは非常に難しいとされる。なぜなら、すべてを調べなければならないから。
この場合、すべてのゲームのルー
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