本編前
第三話
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はインターフォントは別に小型のカメラがついているのだろう。誰が来たかをあっさりと見抜き、プツッと何かを切るような音が聞こえて、向こう側との通話は切れてしまった。
待つこと数十秒、目の前の重い門の向こう側に見える大きな西洋風の左右両方が開く扉の片方をあけて出てきたのは、紺を基調としたワンピース型の洋服の上から白いエプロンドレスに身を包み、頭の上にカチューシャのようなものをのせた――― 一言で言うならまさしくメイドを体現したような姿をした女性だった。
その女性はカツカツとまるでモデルが歩くかのように素人から見ても綺麗だと思える歩き方で門の近くまで来て、誰しもを拒みそうな門を開ける――――かと思いきや、その大きな門の一部に人が一人だけ通り抜けられそうな別の部分があり、その部分を開いて通り抜けるように促した。
バニングスさんは、慣れているのか平然と門をくぐり、小市民である僕は、なぜか申し訳ない気持ちになりながら、メイドさんに頭を下げながら―――頭を下げるとニコリと微笑まれた―――門をくぐった。メイドさんは、僕が門をくぐったことを確認すると一部だけ開いていた門を閉じ、歩き方は先ほどと変わらないにも関わらず、僕を追い抜き、バニングスさんをも追い抜いてしまい、最後に豪華な洋館の入り口を開く。先にバニングスさんが躊躇なく入り、次に僕が扉の向こうに見える別世界に頭が朦朧としながらも、何とか玄関に入る。
「ようこそ、月村邸へ」
メイドさんが玄関に入るときに声をかけ、このときになって、僕はどんな場所に着たのかをようやく把握し、唯一の手荷物である包みを持ってきたことを、それを勧めてくれた母に改めて感謝した。
◇ ◇ ◇
さて、今日は実に驚愕することが多い日だ、と思ったのはついさっきのことだっただろう。今日はもうさすがにこれ以上、驚くことはないだろう、と思っていたのだが、その考えは至極あっさりと覆されてしまった。
僕とバニングスさんが月村邸にお邪魔し、メイドさんの案内に従って廊下を歩くこと数十秒。案内された先はある一室だった。ここでお茶会が行われるのか、と感慨深く思いながらメイドさんに案内されるままに部屋に入る。そこに広がっていた光景は、僕を今日一番の驚愕に誘ってくれることになる。
部屋に入った僕らを迎えてくれたのは、リビングと呼ぶには広い部屋。真ん中に置かれた六人は座れそうな大きなテーブル。そして、姉妹だと明白に分かる少女と女性の二人。そのうち、一人は今日のお茶会に誘ってくれた月村さん。そして、もう一人は―――
「あら、あなたが蔵元くん? すずかがお世話になったわね。私が姉の月村忍よ」
月村さんと同じく夜を流したような艶やかな黒髪を翻し、椅子から立ち上がると僕をまっすぐに見つめて
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