本編前
第三話
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「え?」
「あんたの家のパパはなにしてるの?」
「あ、えっと……僕のお父さんは、○○○って会社の子会社で機器の開発やってる」
「―――その会社、あたしのパパが社長している会社の子会社ね」
ぶっ、と思わず吹きそうになってしまった。
なんというシュチュエーションなのだろう。社長―――しかも親会社の―――の娘が目の前に。世の中狭いものだ。しかしながら、考えてみれば、親父の会社はここから二駅ほどで、親会社もその近くにあるのだから、彼女の父親と僕の親父に関係があってもなんら不思議ではないのかもしれない。もっとも、さすがに親会社の社長と子会社の開発部課長の関係とは思わなかったが。
もしも、これが漫画の世界で言うなら、僕はバニングスさんの機嫌を損ねないようにゴマをすっているところだろう。そして、もし彼女に何かしら気を損ねることをすれば、僕の親父の首が飛ぶのだ。まあ、実際にあったとすればたまったものではないが。
そんな風に盛り上がるわけでもなく、かといってまったく会話がないというわけでもない。強いていうなれば、お互いが緊張したお見合いのような会話が月村邸に着くまでの約二十分間細々と続くのだった。
◇ ◇ ◇
僕の今の表情を形容するとすればポカーンが正解だろうか。口を開けて目の前の豪邸を見ているに違いない。
当たり前だ。日本で豪邸と呼べるような洋館を見せられれば誰でも呆然としてしまうだろう。しかも、それが夕日に照らされて、非常に幻想的な雰囲気を醸し出しているなら尚のことである。これで、ツタや植物が壁に走っているなら、魔女の洋館? とも考えられたかもしれないが、洋館そのものは綺麗なものであり、やはり豪邸と呼ぶほかなかった。
今日は実に驚愕させられる日だ。もしかして、ゴールデンウィーク中に何事もなく遊べたしわ寄せが一気に来ているのだろうか。
「なにやってるのよ? 行くわよ」
すでにリムジンを帰したバニングスさんが、呆然としている僕の横を通って先行する。
西洋風の大きな閉ざされた門。一見すれば、誰も彼もを拒んでいるように見えるが、その門柱につけられたインターフォンだけが、来客を許可しているように思える。
僕だったら緊張して押そうか押すまいか、小一時間悩みそうだが、バニングスさんは、この家に来たことがあるのか実にあっさりと黒い門柱に取り付けられた白いベルボタンをその細い指先で背伸びしながら押した。
確かに子供が押すには若干高い位置にあるもんな。
『はい、バニングス様と蔵元様ですね。今、そちらに伺います』
インターフォンから聞こえてきたのは女性の声。抑揚があまりなく、平坦な声から考えると実に落ち着いた感じの女性ではないかと思う。
彼女は、門に
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