本編前
第三話
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茶会に参加し、僕もついでに拾っていってもらえるとなれば、有り難いという感情以外に浮かぶものはなかった。
「それじゃ、今日の夕方ぐらいでいいかな? お姉ちゃんが帰ってくるのがそのくらいなんだ」
そう提案してくる月村さんの了解の意を伝えると丁度休み時間の終了を告げるチャイムが鳴り、月村さんとバニングスさんは自分の席へと戻っていた。
お茶会ね―――さて、何か持っていくべきだろうか?
前世とあわせて二十数年の経験を持つ僕だが、お茶会と銘打たれたような上品な会合なんて行った経験はない。これが野郎の飲み会であるなら、酒を持っていけばいいだけなのだが。さすがに、というか未成年飲酒が厳しくなり親父の買い物ですらお酒が変えなくなった今日では到底不可能であり、なによりもお茶会とは全然別物になってしまう。
う〜ん、後でバニングスさんに聞くことにしよう。
◇ ◇ ◇
「なにやってるのよ。早く乗りなさいよ」
「え? う、うん」
時刻は午後四時。場所は聖祥大付属小学校正門前。高学年の小学生が下校している中、好奇の視線を浴びながら僕は、目の前のリムジンと呼ばれる車に身を滑らせた。
高級車として名前だけは知っているリムジンだが、乗り心地はその有名さにまったく劣っていなかった。僕の家の車とは比べ物にならず、どこかのソファーに座っているような感覚だ。
「鮫島。出して」
テレビの中でしか聞いたことないようなお嬢様言葉。専属の運転手がいて、その人に命令するなんて、どこの大金持ちのお嬢様? という感じだ。そのバニングスさんの言葉に従ってリムジンはゆっくりと動き出した。さすが、高級車。窓から見る光景は間違いなく車が動いていることを示しいてるのにも関わらず、車内の揺れは殆どないといっても過言ではない。目隠しをされていたら、動いていることにすら気づかなかったかもしれない。
「……ちょっと、何か話しなさいよ」
初めて乗るリムジンに感激というか、緊張していた僕は呆然と外を見ていたのだが、どうやらそれがバニングスお嬢様には気に入らなかったらしい。不満げな表情を浮かべて僕を見ていた。どうやら、彼女は沈黙が嫌いらしい。
「えっと……バニングスさんの家ってもしかしてお金持ち?」
彼女のリクエストに答えて沈黙を破った僕の質問は愚問だった。こんな車を持っている以上、金持ちでないわけがないというのに。どうやら、写真や辞典以外で初めて目にしたリムジンというものに舞い上がって頭が働いていないようだ。
「そうね。パパは社長をしてるからお金は持っていると思うわよ」
「そうなんだ」
――――話が終わってしまった。どうやら、今の僕の脳みそは絶不調らしい。
「―――あんたは?」
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