第1章 やって来ました剣と魔法の世界
第10話 To be,or not to be
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バサはそう言った。
普通ならば、考えられない台詞を……。
「確かに、以前には考えた事も有った。でも、もし、わたしが父の仇を討ったのなら、次はイザベラにわたしが討たれなければいけない。
まして、ガリアは現在、ちゃんと治められている。
そんな国の王を私怨だけで討てば、どう言う結果を招くか、わたしにも簡単に想像は付く」
一瞬、本当の彼女が垣間見えたかのような優しげな、しかし、それだけに覚悟の伴った台詞の後、その理由を説明するタバサの口調は、出会ってから、この会話を始めるまでの彼女そのもの。平坦で、抑揚の少ない、やや聞き取り辛い小さな声に戻って居た。
しかし、その声は、何故だか俺にはとても耳に心地よい物で有ったのですが。
しかし……。冷静な娘ですね、俺の主は。それに、何故、父親が死に至ったのか理解もしている。
オルレアン公シャルルが殺された理由は、つまり彼が王家の一員で有り、更に本人にその意思が無くとも、周りから王位に登る事を望まれる存在だったから。
ならば、自分がそんな立場に立とうなどとは思わないのが普通ですか。熱く焼かれた鉄板の上で、生涯、踊り続ける事を義務付けられている王などと言う存在には。
まして、自らが、その王の決断と言うヤツに処された家の人間です。自らが王位に即いて、最初に行うのが自らの正当性を示す為の、サリカ法の廃止と、生き残った前王家の人間の処分。そして、不穏な行動を起こす可能性の有る家臣や貴族たちの処分などと言う血なまぐさい処置を施して行く必要が有ります。
そんな事を自らが進んで為したいとは思わないでしょう。普通なら。
それに、どうも、そのタバサのお父ちゃんを王に推し戴こうとした貴族たちと言うのは、それなりに野心に溢れた方達だった可能性が有りますから。そんな連中を頼るような愚を犯すようなウカツな娘でもないと言う事ですか。
つまり、この目の前の寡黙な少女は、それだけの政治的なセンスも持った、更に、未来を予想できる能力も持つ頭の良い少女と言う事に成ります。
まして、復讐にのみ生きる人間は、最早人間では無く別の存在に変わっています。
そんな陰気に囚われた存在の強い思いが、陽の神獣で有る青龍を召喚出来る訳は有りません。
一歩間違えていたら、ピエール・スゥードに彼女が成っていたと言う事なのでしょうね。
本名を使わずに使い魔召喚を行う。まして、その感情は陰の気に彩られたモノ。
災厄を招き寄せた可能性が高いですか。
しかし……。
「確かに、母の病の事は貴方に頼みたい。でも、その後の生活に関しては、わたしが何とかする。
それに、元々、貴方の生活の面倒を見る事も最初の約束」
しかし、妙に生真面目な雰囲気でタバサはそう続け
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